本研究は、高齢者介護の場面において、ケア提供役割が公的サービスと家族のあいだでどのように分担されているかを明らかにすることを目標としている。本年度は、前年度に行った分析を発展させるとともに、研究成果の公表に向けた活動を推進した。 分析においては、高齢の親を、子世代の誰が、どのようなパターンで援助するか、また、その選択と公的な介護サービスはどのように関連しているかという点に着目し分析を行った。具体的には、日本の高齢者を対象としたパネル調査である「全国高齢者パネル調査」(JAHEAD)の個票データを用い、回答者とその子世代(子と子の配偶者)が紐付いたデータを作成し、子世代が高齢の親に対してどのような種類の援助を提供しているかを予測するモデルを作成した。援助のパターンを、「援助なし」「身体的介護を提供」「家事・生活的援助のみ提供」という3つのパターンに分け、どのようなときに、どのパターンの援助のあり方になりやすいかを予測するモデルを推定した。分析の結果、身体的なケアの提供確率に対しては在宅の公的介護サービスの利用が正の相関を持っていたが、家事・生活的援助のみを提供する確率に対しては公的サービスは明確な効果は確認されなかった。 以上の研究成果は学術雑誌へ投稿しており、掲載が確定している。本研究期間終了後は、海外のデータを用いた国際比較分析を行いながら、本研究で明らかにした理論枠組みを発展させていく。
|