本研究課題は、1950年前後生まれコーホートである東京都西多摩地域の森林ボランティア活動の初期の中核的担い手が、活動をどのように構想・実践してきたのかを、担い手のライフコースに着目しつつ明らかにするものである。東京都西多摩地域の初期の森林ボランティア活動の企図と評価を担い手に内在的な視座から明らかにし、ボランティアの活動者にとって活動の社会的意義を語ることのもつ意味を検討してきた。 研究課題の最終年度である本年度は、前年度に引き続き、本研究課題に関連して収集してきた既存資料の整理・分析と、関連文献の収集をおこない、さらに、新規の聞き取り調査・資料収集を進めた。 研究の成果の一部として、東京都西多摩地域の森林ボランティアの初期の中核的担い手のうち、みずからを全共闘世代と位置づける活動者の論理に着目した報告を、第93回日本社会学会にておこなった。予示的政治志向という概念を手がかりに、活動の社会的意義を語ることをあくまで動員のためのレトリックとしてとらえ、継続的な活動へのかかわりのためには、みずから語る活動の社会的意義と身体感覚との接続が必要であるとする語りを読み解いた。またこれとは別に、森林ボランティア活動の展開を環境運動の観点からまとめたコラムを事典に掲載予定である。そこでは、森林ボランティア活動は、当初マクロな社会変革の可能性という観点から注目を集めてその規模を拡大してきたが、近年では、活動者自身の経験というミクロな次元での変化や創造の可能性に目が向けられ、新たな展開が模索されていることを明らかにする。 本研究の意義は、活動の中核的担い手の時代的拘束性やコーホートの効果、成熟のプロセスがもたらした影響についての知見を森林ボランティア研究にもたらす点で意義を有するものである。
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