本研究の目的は、グループレベルでの階層帰属意識の規定メカニズムを計量的に明らかにすることである。2022年度は、SSM調査やSSP調査の複数時点(1985年~2015年)のデータを用いて、Finite Mixture Models(FMM)と呼ばれる潜在クラス分析の一種を用いた分析を行った。その結果、時代によって階層帰属意識の「静かな変容」の様相が異なっていたことが明らかとなった。具体的には、1985年から1995年にかけては、高階層性クラスの構成割合が増加するというかたちで全体の階層性が高まったように見えていた。そして1995年から2015年にかけてはその高階層性クラスの階層性がさらに高まるというかたちで全体の階層性が高まったように見えていたのである。これらの研究成果をまとめたものを「第73回数理社会学会大会」で報告し、他の研究者からのコメントを受けて修正した研究成果が「中京大学現代社会学部紀要」に掲載された。 今回の一連の研究によって、グループレベルでの階層帰属意識の規定メカニズムにおいて、1.学歴グループによる階層帰属意識の個人内変化の違い、2.潜在地位クラスの変化によって引き起こされる階層帰属意識の時代変化、3.階層性の異なるクラスの変化によって引き起こされる階層帰属意識の時代変化、という3つの発見があった。各グループレベルでの変化の詳細が明らかになったことや階層性の異なるグループを発見したことから、既定メカニズムの完全な解明に向けて確かな前進があったと言える。しかし、グループレベルで見た際の階層帰属意識の複雑さが明らかになった側面もあり、今後の研究でより詳細な検討が必要となっていくだろう。
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