研究課題/領域番号 |
19K23261
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研究機関 | 花園大学 |
研究代表者 |
笹谷 絵里 花園大学, 社会福祉学部, 講師 (50847465)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 遺伝 / 育児書 / 保因者 / 出生前診断 / 人工妊娠中絶 / 優生思想 / 疾患 |
研究実績の概要 |
申請者の研究は、「保因者」という身体の存在を日本と台湾の育児書の視点から、新たに捉えなおすものであり、この点で今までの医療社会学、生命倫理学、ジェンダー学の研究にない特色がある。また、「親の遺伝情報」の取得による「次子の選択」が、育児書の表象によってどのような影響を与えるのか/与えないのかという視座を切り拓くことを目的としている。 具体的には、「保因者」がその国の育児書でどのように表象され、子どもの選別に影響を与えているかを明らかにするものである。まず、日本と台湾の育児書の「出生前診断」と「保因者診断」の内容について比較を行い、記述内容にどのような相違があるか明らかにする。さらに、台湾と日本の出生に関連した法律や政策の変遷が遺伝性疾患及び染色体異常症の子どもの出生数の変化や中絶数といった統計データに、影響があったのか/なかったのかを分析する。加えて、育児書の著者にインタビューを実施し、なぜ、そのような記述としたのかを検証する。本研究では、従来の議論を踏まえた上で、新たに台湾と日本では、「保因者」がどのように表象され、政策が実施されてきたのか、という切り口を加えて、遺伝性疾患の保因者の現実を歴史社会学、医療社会学の手法で明らかにする。 新しい医療技術が確立し、人々に適用されることは、今まで見えなかった、「新たな身体の存在を顕在化させ、作り出す」こととなる。「保因者」の顕在化は、社会的にいかなる意味をもつのか、妊婦やその家族にどのような影響を及ぼすのかを日本と台湾の育児書から明らかにすることが本研究の意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年10月から日本における文献調査を中心に研究を開始し、資料収集を実施した。 2020年1月末から2月初旬にかけてトルコ、カイセリで開催されたUSBIK3にて口頭発表を実施した。 2020年3月初旬に台湾台北に資料調査及びインタビューを予定していたが、新型コロナウイルスの影響のため、インタビューは中止となり、育児書の購入及び資料調査のみ実施した。 2020年3月にUSBIK3に論文を投稿し、現在査読中である。 以上のように、2019年から2020年2月までは、順調に研究を遂行できた。また、現在台湾で購入した育児書の分析を実施している。現在までの研究遂行状況はおおむね順調であるが、今年度は海外渡航への影響や研究発表を予定していた学会の中止などの影響もあり、研究の進捗に影響を与える可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策として、台湾で購入した育児書の分析及び、日本と台湾、さらに戦後の母子政策に進駐軍の影響を大きく受けた沖縄を加え、3つの国及び地域を比較することで相違を明らかにしたい。 一方で、新型コロナウイルスの影響により、研究の推進に大きな影響を受けている現状がある(海外、国内への渡航および移動制限や学会の中止等)。そのため、実際の研究遂行にどのような影響が及ぶか予測不可能な状況であるが、今後の計画を以下に記述する。
2020年11月日本保健医療社会学会にて口頭発表予定(査読済)である。2021年1月末USBIK4にて口頭発表を予定している。2021年3月末USBIK4に論文を投稿予定である。2021年5月日本保健医療社会にて発表を予定している。2021年9月日本保健医療社会学会に論文投稿予定である。
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