研究課題/領域番号 |
19K23262
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研究機関 | 広島文教大学 |
研究代表者 |
仙波 希望 広島文教大学, 人間科学部, 講師 (50847697)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 平和 / メディア / 広島 / 復興 / 都市 / 都市研究 |
研究実績の概要 |
2019年度は、当初予定通り、本研究の全体にかかわる基礎作業ならびに資料体構築を行ってきた。具体的には以下、三つの方向性での研究調査に大別できる。 【1】研究全体に関連する広島研究における、先行研究の再検討を実施した。昨今再び活発になった広島研究の動向をキャッチアップし、本研究のもつ独自性を再度確認する作業を行なってきた。本研究の特質は、1945年8月6日に「起点」を置くのではなく、戦略的に戦前からの連続性という視点をもってこの〈平和都市〉理念とその展開を分析していくところにある。このような研究の独自性を再度検証すべく、他の社会学・人文地理学領域の研究会にも積極的に参加した。これらの作業を積み重ねていくことにより、本研究全体にかかわる問題意識の精度をより高めていくことができた。 【2】広島市公文書館、広島県立文書館、広島市立中央図書館などを中心とした定期的な史料調査及び現地調査を実施した。その成果として、本研究に関連する基礎的な史資料を広く採取・閲覧した。既往研究では看過されてきた資料体も複数確認することができ、2020年度の研究展開に向け、先鞭をつけることができた。 【3】都市理論における新たな理論的枠組みの構築を試みている領域横断型のプロジェクト、Post Urbanism Projectと連携し、本研究の理論的寄与の可能性を探った。本研究は「広島」を対象としているが、「広島」固有のケーススタディを生み出すのではなく、これまでと異なる回路での(都市)理論への接続を目指している。そこで具体的には、アナーニャ・ロイやジェニファー・ロビンソンによって主導される2010年以降都市研究における一大潮流とされる「ポストコロニアル都市理論」に関する研究報告を複数回実施し、これまで日本語圏ではほぼ看過されてきたこの領域の位置づけやそこから得られる視点などを精査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したとおりの資料調査の進展、および理論的枠組みの検討を行うことができており、おおむね順調に本プロジェクトの目的にそった研究を遂行できている。研究が進むなかで、他の研究プロジェクトとの連携可能なポイントも複数浮上しており、今後の研究を進めていくうえで、様々な派生的な成果を生み出しうる可能性を見出すこともできた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年度は、【A】本プロジェクトの最終的な目標である、研究成果の単著公開のための作業に最もリソースを費やす見込みである。既に版元とは出版に向けた調整をすすめており、年度内での完成・刊行を目標として、執筆を行なっている。また、【B】本プロジェクトにおける都市研究に対する理論的寄与を抽出し、これも共編著としての刊行に向けた作業もあわせて実施している。こうした【A】【B】の目標達成に向け、可能な状況になれば、適宜想定していた調査のための国内外の出張を再開する予定である。また、日本都市社会学会などの本研究が関連する学会へも積極的に参加し、本研究の命題をとりまく現代的位相のキャッチアップにつとめ、一地域研究を超えた成果とするための議論を継続したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス拡散防止による所属研究機関の判断により、3月に予定していた出張(50,218円分計上予定)が延期となったため次年度使用額が生じた。出張が可能となればこの費用をそのままスライドして使用する見込みであるが、その目処が立たない場合は本研究に必要な書籍購入に充てる。
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