研究課題/領域番号 |
19K23269
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
堤 晴彩 鳥取大学, 地域価値創造研究教育機構, 助教 (50848421)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 地域資源 / 統計力学 / 木材 |
研究実績の概要 |
地域資源活用の意義の探索に向け,地域産(地域資源)と外部産を比較した際,両者にどのような変化や違いが生じているのかを統計力学的手法により定量的に明示することが本研究の目的である。本研究では奈良県吉野町と鳥取県智頭町での杉樽醸造させた地ビール事業をケーススタディとして実施しているが,本研究目的の達成において,多様且つ膨大な性質により成立している木材(木樽)を評価するためには,木材の一つ一つの性質について網羅的に計測する手法とは異なった包括的な手法における更なる構築と充実が課題であった。そこで2020年度は,2019年度に実施した実験の再検討とともに,解析手法の充実に向け,近赤外スペクトル及び顕微鏡画像のフーリエ変換によるスペクトルといった多次元データの収集の拡充を試み,普遍的な物理の理論に基づいて木材性質のばらつきを考慮した包括的な木材特性評価及びアプローチの構築と拡充を行った。結果,ばらつきを有する木材の性質に対して,物理の理論に基づいた議論を適応させることで,ある規則に従った予測及び評価が可能になり得ることを確認し,酒樽をはじめ木製楽器等の芸術木製品のような複雑な特性評価(音色や味)といった,多くの要因が個別ではなく協調して成立するような現象の解明及び表現手法の充実を図れた。このことは速やかに学術論文にまとめ,2報(Journal of Wood Science, Vibrational Spectroscopy)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験条件を再点検しつつ,2019年度に実施した研究の補完及び展開を研究計画に沿って行った。あわせて,本研究の要となる統計力学的アプローチにおける研究成果について、学術論文に2報掲載された。一方で,新型コロナウイルス感染症の影響により,学会やシンポジウムの中止及び国内国外の往来の自粛等により研究で得られた成果の発信や更なる研究展開に資するための情報収集等が当初の計画に対して想定通り進めることができなかった。以上の状況を踏まえ,上記の評価を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
解析手法における基礎研究を充実させていくことと同時に,本研究の実装性を高めていくための追加実験及び情報収集を行う。また、得られた研究成果や研究内容の発信に傾注し,学会等の学術の場のみに留まらず,市民等の社会に対して本研究の発想や内容をわかりやすく発信するためにイラストや低年齢向け図書の製作などを通したアウトリーチ活動を展開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた学会の中止や出張の延期等により、2020年度は計画していた金額よりも少額の支出となった。 次年度の使用計画については、上記の繰り越された出張費に使用するほか、研究の更なる展開において必要となる物品等の購入資金に充てる。申請時の計画から未使用となった財源に対しては、本研究内容および成果をイラストや低年齢向け図書の製作などを通して広く発信していくためのアウトリーチ活動費およびそれに関連する経費に計上する。
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