本研究は、生活保護制度の基礎となった救護法の特別法である母子保護法についてその適用水準(生活保護でいうところの捕捉率)を定量的に明らかにするとともに、運用方針が実際の母子保護法の適用水準にいかなる影響を及ぼしたのかを定性的に明らかにするものである。母子保護法の該当者数と実際に保護を受けられた保護人員を比較したとき、保護の適用水準は全国で1938年度の4月から9月で約39%、10月から翌年3月で約49%であった。母子保護法が内包する保護の対象となる母親に対する期待の二重性は、運用に当たって労働能力を持つ母親である女性の就業促進に重きを置いたと考えられ、適用水準は試算に満たない低いものであった。
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