研究課題/領域番号 |
19K23275
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
陳 怡禎 日本大学, 国際関係学部, 助教 (30845722)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ジェンダー / 社会運動 / 台湾 / 香港 / 若者 / メディア / 社会運動における情動 / サブカルチャー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2014年3月に台湾で起きた「ひまわり運動」、および9月に香港で起きた「雨傘運動」を考察することを通して、現代社会運動の担い手である若者、なかでも特に女性参加者はいかに、自分自身の日常的趣味を用いて社会運動について語り続けているか、さらにその語りを通して、社会運動に意味を付与しているかついて考察することである。 令和3年に実施した本研究の成果について以下のように概要を説明する。(研究成果の一部は、若手研究課題番号「20K13706」と共同実施するものである) 1.以下の日本国内学会で発表した:『台湾ひまわり運動における “アイドルーファン”現象』(表象文化論学会第15回大会)、『台湾ひまわり運動・ 香港雨傘運動における 「対話」と「情動」』(第94回日本社会学会大会)、『社会運動を「語る」 ー台湾ひまわり運動における「内向的コミュニケーション」に焦点を当ててー』(北東アジア学会関東地域研究会)。 2.以下の日本国内学術書に査読付き論文を投稿した:『テレビドラマにみる戦後台湾のアイデンティティ──メディアが描く「中国/日本」イメージの受容に注目して』(『学習院大学東洋文化研究叢書 戦中・戦後日本の〈国家意識〉とアジア──常民の視座から』236-257ページ)、 『対話的社会運動空間 ― 台湾ひまわり運動・香港雨傘運動を事例に』(『埼玉大学教養学部 リベラル・アーツ叢書14 観客と共創する芸術 II』283-300ページ) 発表や論文において研究者は、社会運動に参加している台湾や香港の若者、中でも女性は社会運動空間において、文字、二次創作、言説を通して「語り合い」を行ったことを考察し、以下の議論を示している:社会運動に参加する若者は、社会運動空間で対話を通して情動を生成し、社会運動に意味を付与したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
台湾や香港での現地調査やフィールドワークを実施する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で海外渡航できなかった影響で、研究の進捗状況はやや遅れていると考えられる。 新型コロナウイルスの影響を考慮し、令和3年での調査は以下のように計画を変更し、研究を実施した: 1.台湾に対する調査において、テレビ電話を用いて、インターネット上で調査対象を探し、遠隔調査を実施した。インフォーマントとは調査後にも継続的に連絡をとっており、インタビュー調査のサンプル数を集めながら、集めたデータについて分析し、令和3年に学会や論文発表で調査結果を発表していたため、研究進捗は概ねに計画通りに進めることができたと考えられる。 2香港は、厳しい社会情勢によって、ネット上のインタビュー調査はインフォーマントの状況を考慮した上で、しばらくインタビュー調査を中断したが、既存の新聞記事、社会運動参加者による活動記録、台湾や香港の社会運動創作物のデータベースアーカイブといった三つの種類の二次資料を考察し、分析を試みた。 以上の理由で、フィールドワークによる一次資料の収集などの進捗状況は遅れていたが、二次資料の収集や整理・分析は研究計画通りに実施できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年もまだ新型コロナの影響が予想されているが、台湾の感染状況は比較的に落ち着いているため、2022年の夏頃にフィールドワーク調査は再開する予定である。また、香港に関しては、引き続き感染状況を注視し、フィールドワークを実再開できない場合は、香港の社会・文化資料を保存する大学図書館や博物館などから資料を取り寄せて二次資料を分析・考察する。具体的に以下の3つの方策を考えている: 1.現地でのフィールドワークは実施不可能の場合、インターネットを活用し、引き続き台湾のインフォーマントに対し、非対面式インタビューを実施する。その際に、インフォーマントから社会運動参加当時の記録(写真や持ち物等)を取り寄せるように交渉を行い、彼女たちの運動参加経験を詳しく分析する。また、香港に対する調査の分析手法を方向転換し、インタビュー調査ではなく、二次資料に対する分析を中心に行いたいと考えている。 2.文化史に関する研究に重きを置くようにすることも計画している。社会運動参加者の生活史を聞き取り、彼らの社会運動における文化実践の歴史背景を明らかにする。 3.日本国内での学会発表や論文投稿を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年に計画していた台湾や香港での海外調査は、新型コロナウイルスによって実施できなかった。また、先行文献の収集に物品費として支出はあったが、新聞記事 アーカイブなどを利用し内容分析やインタビューを実施したが、オープンアクセスのアーカイブのため、資料収集に関する支出は節約できた。以上の理由で、次年度使用額が生じた。 生じた次年度使用額について以下のように使用計画を考えている。 1.2022年夏と冬に新型コロナウイルスの感染拡大状況を注視しながら、台湾現地で二回フィールドワーク調査を実施し、また、台湾に移住した香港の移民たちにもインタビューを実施する予定である。 2.調査データの文字起こしを行いながら、 インタビューで得られた調査データや今年度において実施した新聞記事アーカイブデータに対する考察成果も並行的に論文投稿や日本や海外論文誌での発表を実施すると考えている。
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