本年度は、コロナ禍の影響で延期していた東京大夕張会・札幌大夕張会を対象としたインタビュー調査・質問紙調査を実施した。インタビュー調査は、東京大夕張会会員5名、札幌大夕張会会員6名を対象に、座談会形式でおこなった。調査項目は、炭山コミュニティでの生活、学校、進学・就職などである。トランスクリプト化を終え、現在、座談会の記録(リサーチペーパー)を作成中である。つぎに、質問紙調査は、東京大夕張会幹事協力のもと、249名の会員に配布し、有効回答104票、有効回収率43.9%(宛先不明等12票を除く)となった。本調査では、炭山コミュニティの春夏秋冬、印象深い出来事・場所・人、閉山・離山後の大夕張との関わりなどをうかがっており、現在、入力作業を進めている。加えて、夕張市教育資料アーカイブズ構築のため、同市教育委員会から委託された資料整理・デジタル化を進めている。 以上の調査と併行して、学会発表ならびに論稿等の執筆を進めた。主な成果は、以下の3点である。第一に、石炭産業の漸次的撤退期における雄別炭砿株式会社企業ぐるみ閉山(1970年)と東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の家族・子どもの移動に関する比較検討の結果を研究例会で報告し、論稿としてまとめた(「戦後北海道における石炭産業の復興と引揚者の『吸収』」)。 第二に、石炭産業の漸次的撤退期を含むスクラップ・アンド・ビルド期(1950年代後半から60年代)の産炭地における若年労働力の移出と家族の移動について、学会報告としてまとめた(RILAS研究部門「知の蓄積と活用にむけた方法論的研究」第13回研究会記録 ライフコース論×環境社会学)。 第三に、戦後、樺太引揚者の北海道内炭鉱への移動について、とりわけ、三菱大夕張炭鉱を含む三菱系炭鉱間の移動に注目して整理し、リサーチペーパーとしてまとめた(「樺太引揚者の炭鉱への移動プロセス」)。
|