研究課題/領域番号 |
19K23279
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研究機関 | 大阪商業大学 |
研究代表者 |
大平 剛士 大阪商業大学, 総合経営学部, 助教 (60844090)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 介護ロボット / 参加型意思決定プロセス / イノベーションの採用 / 高齢者介護施設 / 経営組織論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高齢者介護施設における介護ロボット導入の参加型意思決定モデルを開発することである。2020年度に関しては、2019年度に実施したインターネット調査データを用いて、高齢者介護施設における介護ロボット導入のプロセスと利用状況の関係について介護職員の視点から探索的に検証した。特に、導入プロセスとして、「導入前に説明が実施されているか」、「経営層からの提案による導入か」、「管理職・一般職員からの提案による導入か」、「導入プロジェクトが設置されたか」、「利用上の問題点や工夫等の情報共有の機会があったか」という5つの取り組みと、介護職員による介護ロボットの量的(利用人数)および質的(活用度)な利用状況の評価の関係性を探った。回答を得られた介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院(介護療養型医療施設)に所属する介護職281名の中から、介護ロボットが施設に導入されていること、介護ロボットの導入プロセスや利用状況を把握していること、分析で用いる変数に欠損値がないことの3つの条件を満たす介護職101名を分析対象とした。回帰分析の結果、管理職・一般職員提案型導入と利用状況の量的評価と質的評価の両方の間には正の関係があったこと、導入前説明実施と利用状況の質的評価、および情報共有機会と利用状況の量的評価の間には正の関係があったことがわかった。本分析結果については、日本社会福祉学会第68回秋季大会にて学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、イノベーションの採用に関する先行研究から、高齢者介護施設における介護ロボット導入の参加型意思決定に関連する概念を抽出し、それらの概念に介護ロボットの導入にどのような影響を与えているかを検証する縦断的なインターネット調査等の量的研究を実施する予定であった。しかし、調査会社を通したインターネット調査では縦断的な分析に必要なサンプルの確保が難しいことが判明したため、代替措置として、高齢者介護施設への郵送調査を計画した。ところが、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況が続いたため、郵送調査によって高齢者介護施設側の負担につながることや、高齢者介護施設からの調査協力が十分に得られない可能性が極めて高いことから2020年度中の郵送調査の実施を中止した。また、同様の理由から電話等でのインタビュー調査も実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響は継続するものと考えられる。しかしながら、高齢者介護施設の入居者である高齢者や介護従事者へのワクチン接種によって、2021年度後半には高齢者介護施設の新型コロナウイルス感染症対応の負荷が下がっていくものと思われ、本研究の郵送調査や電話等でのインタビュー調査への協力を得やすくなることが期待できる。したがって、高齢者介護施設における新型コロナウイルス感染症の感染状況やワクチン接種の進捗状況を考慮しつつ、2021年度後半に郵送調査と電話等でのインタビュー調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に計画していた高齢者介護施設への郵送調査が新型コロナウイルス感染症の影響により実施できなかった。研究期間を延長し、2021年度に当該郵送調査を実施する。
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