研究課題/領域番号 |
19K23281
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研究機関 | 尚絅大学短期大学部 |
研究代表者 |
佐草 智久 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 助教 (10848542)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | メイド / 家政婦 / 身の回りの世話 |
研究実績の概要 |
今年度は主たる研究対象である米軍統治下沖縄のメイドの比較対象である、本土の家政婦の実態について、九州島内を中心に調査を進めた。なかでもかつて大分県で市が家政婦の利用を公費で斡旋していたことが分かり、このことについて大分市内にて資料調査・家政婦紹介所所長へのインタビュー調査を延べ7回実施した。 その結果明らかになったことは以下のとおりである。本事業は「在宅寝たきり老人看護家族激励事業」という名の下、1982年8月から2000年3月まで実施されていた。これ以前に同様の事業が東京都江戸川区で実施されており、それをききつけた、大分市内のとある家政婦紹介所所長が市に働きかけたことがきっかけで実施に至った。しかし、当初の想定とは裏腹に利用が伸び悩み、デイサービスやショートステイなど、他のレスパイトケアが拡充したことを理由に、介護保険制度が開始される直前の2000年3月に中止になった。同事業について今年度明らかにした成果は、2020年度中に学会発表予定である。 なお主たる研究課題である米軍統治下沖縄のメイドについては、当初年度末に調査を計画し、県内の自治会等に調査依頼をする予定であったが、新型コロナウイルス流行に伴い、今年度の実施を断念した。沖縄県内は他地域に比べて流行が早かったことや、本研究のインタビュー予定者は本土復帰前のメイド経験者の女性であり、現在皆高齢者であるため、感染後のリスクが比較的高いこと等が理由である。インタビュー調査はできなかったものの、沖縄県立図書館および沖縄県公文書館所蔵資料、県内の新聞記事から、沖縄市を中心に中部のメイド養成の実態について分析し、当時の女性の就業状況などから、米軍統治下沖縄におけるメイドという職業の位相について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス流行に伴い今年度はインタビュー調査を実施できなかったものの、その他については順調に進捗している。インタビュー調査は実施できなかったものの、これまで収集したメイドに関する資料を整理し、沖縄においてメイドという職業が生まれた経緯、賃金をや雇用体系などメイドという商業を取り巻く環境、米軍を始め琉球政府や自治体など様々な機関がメイドの養成を実施していたことをはじめとする、沖縄社会および米軍統治下沖縄におけるメイドという職業が果たしてきた役割などについて、明らかにできた。これらから、次年度のインタビュー調査実施に際して十分な準備を行うことができたと考えている。 加えて、メイドのこれまで主たる研究対象である米軍統治下沖縄のメイドの比較対象である、本土の家政婦の実態について、九州島内を中心に調査を進めた。なかでもかつて大分県で市が家政婦の利用を公費で斡旋していたことが分かり、このことについて大分市内にて資料調査・家政婦紹介所所長へのインタビュー調査を延べ7回実施した。その結果明らかになったことは以下のとおりである。本事業は「在宅寝たきり老人看護家族激励事業」という名の下、1982年8月から2000年3月まで実施されていた。これ以前に同様の事業が東京都江戸川区で実施されており、それをききつけた、大分市内のとある家政婦紹介所所長が市に働きかけたことがきっかけで実施に至った。しかし、当初の想定とは裏腹に利用が伸び悩み、デイサービスやショートステイなど、他のレスパイトケアが拡充したことを理由に、介護保険制度が開始される直前の2000年3月に中止になった。同事業について今年度明らかにした成果は、2020年度中に学会発表予定である。 以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス流行が収束し、来沖が可能になり次第、改めて調査を依頼しインタビュー調査を行っていきたい。これまでの研究でメイドという職業の多様性とその実態については、就職経路(養成機関含む)や業務内容などある程度明らかにすることができた。その成果を踏まえ、メイド経験者のメイドという職業に従事したことへのその後の人生における意味づけや、ハウスボーイなどをはじめとした、米軍統治期に存在した類似する他の職業との関係など、さらに踏み込んだ内容について、インタビューを実施し明らかにしていきたい。地域は北中城村や嘉手納町、宜野湾市など本島中部を予定している。 また、コロナウイルス流行の状況によって来沖が不可能となる可能性も否定出来ない。その場合は、予定を変更しG.H.Q.占領下における本土のメイドについて資料調査を中心に実施していく。また並行して、メイドの比較対象として、本土の家政婦の実態について引き続き家政婦紹介所のインタビューを実施していく。本土ではG.H.Q.占領下における本土のメイドが、その後日本人家庭の女中・家政婦となったことが先行研究等で明らかになっている。このことを中心に、メイド・家政婦・女中といった同じ家事労働者の関係性とその変化について、検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定通り研究費の執行を進めていったが、最終的に100円の端数が発生した。100円という 非常に少ない金額のため、これのみを執行することは適切ではないと判断し、次年度に繰り越すことにした。
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