研究課題
本研究は、ジャガイモのGABA増加と調理時に生成する発がん性物質アクリルアミド(AA)含量の低減を両立するジャガイモの前処理条件を解明し、生活習慣病予防に繋がるGABAを強化した新しい食品素材開発を展開するため、以下を目的とするものである。細目1:ジャガイモの在来種および一般品種のGABA、アミノ酸、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)、還元糖の関係性の解明、細目2:ジャガイモのGABA含量が増加しAA原因物質が低減する前処理条件の解明、細目3:GABA含量の増加とAA含量の低減が両立する素材の開発細目1では、5種の品種・系統について、HPLC等を用いて、GABA、関連アミノ酸、還元糖、GAD活性を定量した。結果、GABAは、在来種の赤じゃがたで多く、ついで在来種のオランドで多かった。GABA前駆物質であるグルタミン酸はオランドで多かった。アクリルアミドの原因物質とされる還元糖は、赤じゃがた、オランドで、アスパラギンはオランド、メークインで少なかった。GAD活性は、オランドで高かった。細目2では、ジャガイモ男爵を低温スチーマにより、好気および嫌気処理下で、温度(45~70℃)と時間(5~30分)を変化させて処理し、GABAと関連アミノ酸、還元糖を細目1と同様に定量化した。結果、好気処理下では、55℃・5分処理、55℃・20分処理、55℃・30分処理で、GABAが増加した。また嫌気処理下では、55℃・20分処理、60℃・10分処理、70℃・20分処理で、GABAが増加した。またグルタミン酸の減少は、嫌気下のほとんどの処理で認められた。このことから、GAD活性が高まり、GABAの合成が促進されたと考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
現在、細目1のGADのmRNA発現量の測定を検討しているが、それ以外は研究計画書に記載の内容をほぼ達成できたため。
細目2で、好気処理下では、55℃・5分処理、55℃・20分処理、55℃・30分処理で、GABAが増加した。また嫌気処理下では、55℃・20分処理、60℃・10分処理、70℃・20分処理で、GABAが増加した。なかでも、好気条件下での55℃・5分処理は、AAの原因物質であるアスパラギンも減少した。このことから、好気条件下の55℃・5分処理が、GABAを増加させ、AAを低減させる条件として有望と考えられた。この条件を中心に数種の条件で、細目3を進める予定である。さらに、GABAを増加しAAを減少させる条件に適する品種・系統は、オランドと推察されたので、最適条件下が導かれたときの、オランドの、GABA増加、AA減少効果を検証していく予定である。
静岡県農林技術研究所試験研究成果概要集2019年に以下3点が掲載①小杉徹,豊泉友康,池ヶ谷篤:ジャガイモの在来種及び品種別のGABA,アミノ酸,還元糖53-54(2020年3月)②小杉 徹,豊泉友康,池ヶ谷篤:低温スチーム処理がジャガイモGABAに及ぼす影響 55-56(2020年3月)③小杉徹,豊泉友康,池ヶ谷篤:低温スチーム処理がジャガイモのアミノ酸に及ぼす影響57-58(2020年3月)
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バイオテック東海
巻: 84 ページ: 57,58