ジャガイモのγ-アミノ酪酸(GABA)増加と調理時に生成する発がん性物質アクリルアミドの低減を両立する前処理条件を解明し、機能性が高くかつ安全性の高いジャガイモ加工素材の開発の提案に繋げるために、実験1では、ジャガイモの品種・系統間のGABA、アミノ酸、グルタミン酸脱炭酸酵素および還元糖の関係性を解明すること、実験2では、ジャガイモのGABAが増加しアクリルアミド原因物質が低減する前処理条件を解明すること、実験3では、GABAの増加とアクリルアミドの低減が両立する素材を開発することを目的とした。 最終年度は、実験2において、‘男爵’を、好気および嫌気処理下で、低温スチーマーを用いて、温度(45~70℃)と時間(5~30分)を変化させて処理後、GABAと関連アミノ酸、還元糖を定量解析した。その結果、GABAは50~60℃付近で増加し、還元糖は好気処理の55℃・5分と60℃・10分で低減傾向にあり、嫌気処理で増加傾向にあった。以上のことより、前処理条件としては、GABAが増加傾向を示しアクリルアミドの原因物質である還元糖が減少傾向を示した好気処理55℃・5分を設定した。 実験3において、‘男爵’、‘赤じゃがた’および‘オランド’を、好気処理55℃・5分で低温スチーム処理後、フライヤーを用いて180℃・3分コーン油で揚げ処理を行い、アクリルアミドの定量解析を行った。その結果、特に‘オランド’でアクリルアミドが低減する傾向が認められた。このことは、低温スチーム処理により原因物質である還元糖が低減して、アクリルアミドの形成が抑制されたためと考えられた。また、‘赤じゃがた’と‘オランド’の揚げ処理後のGABAは無処理区より低減傾向が認められた。加熱による分解が原因と推察され、今後GABAを更に増加させる低温スチーム処理の温度・時間やGABAの低減を抑える揚げ処理条件の検討が必要である。
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