本研究では、小学校の通常学級を対象に、相互依存型集団随伴性に基づく支援の効果を検討することを目的とした。対象者は、小学校5年の2学級の児童であり、各学級の児童数は29名であった。漢字テストが実施された日を観察日として、データを収集した。学級間多層ベースラインデザインを用いた。ベースライン期(以下,BL期)にトゥートリング(tootling:援助報告行動)手続きを導入し、支援期にトゥートリング手続きと相互依存型集団随伴性に基づく支援を組み合わせた。トゥートリング手続きは、学習内容に関する声かけを付箋紙に書いて担任に報告することであった。相互依存型集団随伴性に基づく支援は、グループ(学級の生活班)全員が付箋紙を提出した場合は、担任はグループ全員にシールを渡す、という手続きであった。2学級を対象に、他児からの援助を報告する児童の割合が増加するか、低成績児童の漢字テスト成績が向上するかどうかを検討した。また、1学級については、班ごとに児童の行動観察を行い、援助行動について一班あたりの平均生起回数を計測した。その結果、2学級ともに他児からの援助を報告した児童の割合が増加し、低成績児童の漢字テストの得点が改善されることが示唆された。また、BL期と比較して、支援期では、援助行動の平均生起回数が増加した。 本研究の学術的意義は、仲間からの向社会的行動を報告するトゥ-トリング手続きと相互依存型集団随伴性に基づく支援を組み合わせることにより、支援開始前に漢字テストが低得点であった児童の漢字テスト成績向上への波及効果を示したことである。日本では、通常学級に在籍する学習面で著しい困難を示す児童への効果的な支援方法が必要とされている(文部科学省,2012)。本研究の結果は、学習面で困難を示す児童が在籍する通常学級での効果的な学習支援方法を検討していく上で重要な資料となるだろう。
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