キャリア形成型コンピテンシーの育成を図るために必要な指導要素の解明を、キャリア教育のうち、特別活動を中心とした時間で「まとめ」「つなぐ」ために用いたキャリア・ポートフォリオ(以下、CPと記載)を中心に行った。 具体的には全国のキャリア教育実践を管見し、実践で用いられたCPを、国立教育政策研究所が示した「学期、学年、校種を超えた『学びの継続性』」「学びの内省としての『学びの発展性』」に加え、「学びをまとめ新たな学びにつなぐ際の過去・現在・未来に渡る時間的枠組みの仕組みを見る『学びの時間的展望』」「学習者のための学びの学習評価の仕組みを見る『学びの評価』」を分析観点に加えてCPの現状を明らかにした。 その上で、4観点で優れていると判断した7小中高校及び1県教育センターのCPを取り上げ、ポートフォリオ開発者へのインタビュー調査並びに教育実践を観察記録し、授業分析を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 ・CPを用いてキャリア形成型コンピテンシーを育成するためには「学びの継続性」「学びの発展性」「学びの時間的展望」「学びの評価」が不可欠な指導要素であり、4つの指導要素を組み込んだCPを開発するとよい。 ・キャリア教育として教科等の学びを「まとめ」「つなぐ」ためには、「過去・現在・未来」との「縦の学びのつなぎ」を図るとともに、同一時制で学んだ教科等の「横の学びのつなぎ」を図る必要がある。すなわち、指導要素の「学びの時間的展望」は、縦と横の「立体的な学びのつなぎ」の実現を図る機能を持たせることが必要である。 ・「学びの評価」を指導要素として機能させるためには、「学校が育てる資質能力」の同定した上で、「長期的スパンによる縦断的振り返り」を図るようにすることと、「他者評価を図る方策」として「ペアによる相互評価」を用いること、また「評価根拠の簡潔化」を図ることが必要である。
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