研究課題/領域番号 |
19K23290
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
尾関 美和 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (60847549)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | ASD / 社会性 / ムーブメント教育・療法 / 体育 / 小学部 / 知的特別支援学校 / 集団 / かかわり |
研究実績の概要 |
研究の具体的内容は次の通りである。 ASDの対象児を含む小学部1,2年生18名に、ムーブメント教育・療法のMEPA-Rを実施した。次に18名のプロフィール表を作成し、それぞれの課題を明確にした上で、共通して取り組む目標を設定した。その中から社会性の発達を目指して、体育の授業でどのように取り組むかを考案し、それらの活動を取り入れた体育の授業実践を6回実施した。授業後には、児童の活動の様子や教員の感想の記録を集めた。ASD児は、コミュニケーションや人とのかかわりが苦手だと言われ、集団活動で誤解を生んだりトラブルを生じたりすることがある。そこで、この研究は、「あたま・こころ・からだ」の3方面から発達を捉え、集団での関わりの中で成長を期待できるムーブメント教育・療法での体育の実践を行ったものである。 この研究の意義や重要性は、ASD児の障害特性に、集団の指導でどのように関わることができるかという点である。ASD児の指導として、これまで個別指導での行動の矯正が行われ、その成果をまとめた研究は複数みられるものの、集団活動での発達支援の研究は少ない。私は、個別指導を長期間受けて育ったASD児が、成長するにつれ、集団生活が難しくなる様子を身近に見てきた。そこで、実際の学校での取組として、教員が実践しやすい集団活動の方法、また効果が期待できる方法を構築したいと考えて取り組んでいる。ムーブメント教育・療法の、子どもの自発性を高める支援法は、子どもたちの「友だちと一緒に活動したい」「かかわりたい」という気持ちを育て、友だちとの友好関係を築くことができるということに対して、充分期待できるものである。このような児童を育てるには、教員はどのような指導や支援をすればよいのか等、具体的な学習活動のあり方を研究することを目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始時に、親族の怪我、手術という想定外の出来事が起こり、その対応に追われたため、研究開始の遅れを生じることになった。 その後、研究開始からは短期間の取組となったが、目標を明確に設定し、目標に応じた活動を集団の中で取り入れたことにより、予想以上に児童の成長が見られた。子ども同士の関わりも広まり、ASD児から自発的な活動が見られるなどの学習の成果もあった。また、体育の授業場面だけでなく、他の学習場面でも児童から友だちを意識した自然な関わりが見られるなど、当初の目標に適した行動が見られ、般化の様子も観察することができた。 授業実践の当初から、教員がMEPA-Rプロフィール表により、共通の視点をもって支援できたことで、児童の様子を具体的に把握、観察することができた。そのため、詳細な記録を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、教員の観察の記録を主に分析し、授業内容のあり方だけではなく、教員の心理面での変化を追いながら、教育の効果をあげる取組について見いだすことをねらっている。 具体的には、6回の授業実践後の各教員のアンケート記述から、教員が児童をどのようにとらえどのように感じていたかや、その心理の変化を分析する。その際には、KH Coderによる分析を行う予定である。授業実践の効果を上げることができる要素を見いだすことで、ASD児に対して、成長を期待できる授業の取組や教育の要素を見いだすことができると期待している。
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