本研究は,社会変化や社会問題につながる「日本と海外で意味内容の捉え方が異なる概念」に着目し,その必要性を実感できる学習方法を活用しながら,授業モデルを構築することを目的とする。, 3年目となる本年度は,寛容概念に着目し研究を行った。西洋において寛容は,異宗派の許容や神からの赦しといったキリスト教との関連性から,耐え忍ぶ意味合いが含まれたり,上下・垂直的な関係性を基盤に許容・赦しを行う側の視点に立つ概念だったりした。対して日本では,自然環境や風土を背景に,集団社会生活を送る上での相互・水平的な関係性を基盤に自己への内的作用を示す前向きな概念であった。これらの知見を踏まえ寛容概念を習得する授業の検討・開発を行った結果,社会科授業では寛容のもつ意味や価値の多元的な側面だけでなく,文化の等価性を基に持続可能な社会形成に向けた機能的側面も踏まえ概念習得をめざす必要性を示すことができた。 3カ年に渡る研究を通して,まず国や文化圏によって言葉やその捉え方が異なる要因を,ローカル・グローバルの観点を踏まえ文化の形成や伝播を中心に追究し明らかにした。その後,現代の社会問題や持続可能な社会形成につながる「日本と海外で意味内容の捉え方が異なる概念」として「安全」「責任」「寛容」の3つに着目し,意味内容の違いやその違いが生じる背景を具体的に示した。また,それらの概念を習得する必要性を実感できる授業方法として「概念カテゴリー化学習」に着目し,これまでとは異なる新たな解釈を加えながら,先に示す概念の習得を可能とする授業モデルを構築することができた。 これらによって,グローバル人材育成において探究的思考を伴う概念学習の必要性が提唱される中,社会科授業という枠組みの中で教科固有の特性を生かしながら,「日本と海外で意味内容の捉え方が異なる概念」を習得する重要性や意義を示すことができた。
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