研究課題/領域番号 |
19K23304
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
江嵜 那留穂 関西学院大学, 国際教育・協力センター, 助教 (10844459)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 教育格差 / 教育の質 / 教授学習過程 / 南アジア / ネパール |
研究実績の概要 |
本研究はネパールを対象に、教育の質を左右する学校内のプロセスに着目し、私立学校等の高いパフォーマンスを支える要因を解明することを目的とする。研究二年目である2020年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により現地調査を実施することが叶わなかったため、主に前年度に収集したデータを用いた詳細分析と、これまでの研究成果をまとめた論文等の執筆に注力した。 詳細分析では、(1)教員の特徴分析、(2)授業分析、(3)ノート分析を実施した。(1)教員の特徴分析では、各対象校(公立学校1校、私立学校2校)にて収集したデータをもとにデータベースを構築し、教員の年齢、教育達成、専攻、経験年数、教員免許の有無等、教員の特徴について分析を行った。(2)授業分析では、授業ビデオを見ながら学習者の学習活動を詳細に記録し、各活動を能動的課題従事、受動的課題従事、学習外活動の3つのカテゴリーに分類して分析を実施した。(3)ノート分析では、対象者のノートや教員へのインタビュー調査結果等のデータをもとに、学習済み単元数や使用ページ数を把握したのち、特定の単元における問題数、問題内容、教員によるチェックについて分析した。そして、これらの結果を学校間で比較し、いかなる差異が見られるのかを考察した。 その結果、全国統一試験において高いパフォーマンスを示す学校よりも低いパフォーマンスを示す学校の方が、教員の教育達成や教員免許の保有状況が良好であるにもかかわらず、私語などの学習外活動の時間が長く、学習済み単元数や問題数といった学習量が圧倒的に少ないことが明らかとなった。これより、教育の質を下支えする教員の教育達成や教員免許の有無は、教授学習過程に大きな影響を及ぼしていないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はCOVID-19の影響により現地調査を実施することが叶わず、追加のデータ収集を行うことができなかったため、進捗状況はやや遅れている。しかし、前年度に収集したデータを用いて詳細分析を実施し、論文執筆を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、学校要因とパフォーマンスの関係についての詳細分析および学校外要因を含めた総合分析を実施する。COVID-19の影響により現地調査実施が不可能な場合は、遠隔調査の可能性も検討して柔軟に対応する。研究成果については、適宜国内外の学会において発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により現地調査を実施することが叶わなかったため、渡航費や宿泊費として計上していた予算を執行することができなかった。使用計画としては、次年度実施予定の現地調査にかかる経費に充てる予定である。
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