本研究は、戦後国語科教育の成立過程を解明するため、戦後占領期に国語科教育改革を主導した文部省職員の国語教育者・石森延男の仕事を明らかにすることを目的とする。 研究実施計画においては、以上の目的に迫るための2020年度の具体的な課題として、以下の三つを設定していた。国語副読本『竹』の収集、東京都品川区光村図書出版本社での『竹』に関する一次資料の調査・収集、『竹』に関する史料の分析と学会口頭発表および研究論文の執筆であった。 このうち一つ目の『竹』の収集については、2019年度中にすべて収集できたため、残りの二つの課題を遂行することを予定していた。前者に関しては、新型コロナウイルス蔓延防止の観点から、光村図書本社への直接の訪問を断念し、メールにて資料の所蔵状況などの確認作業を行った。その結果、当時の社内状況を知る職員はすでに残っておらず、『竹』の編纂過程を解明し得る資料についても残存していないという回答を得たものの、同社の社史において『竹』に関する記述や、光村図書と石森の関係性が記載されていることが判明し、分析の手がかりを得た。後者に関しては、『竹』(全12冊)の内在的分析および周辺事情の解明に着手しその特徴を析出したものの、同時期のほかの教科書・副読本類の収集および比較という視点を踏まえたさらなる検討の必要性が生じ、学会発表や論文投稿には至らなかった。
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