これまで、グローバルな教師教育に関する先行研究と理論の構築に関する研究調査をおこなってきた。本研究では、フィンランドと日本の未来の教師像に関する比較調査研究を行うことを予定していたが、コロナ禍で国内外の調査が限定された。今年度はオンラインで教員養成課程に所属する学生を対象に、参加型ワークショップを企画・実施を行った。教科をただ教えるスキルや経験だけでなく、グローバルな視点やリフレクティブな思考力など、「グローバルな資質」をどの様に子供たちに教えることができるのか、また学生自身が教員養成課程でどの様にグローバルな資質を習得しているのかについて、1)事前アンケート、2)ワークショップ中の対話、3)事後振り返りシートから得たデータ分析をもとに、現状と課題の検討を行なった。その中で明らかになりつつある視点として、グローバルな教育が英語教育の強く結びついているという概念、また英語科目を担当する教員の範疇であるという認識が再確認された。一方で、グローバル教育を実践するための方法論の授業については、高等教育機関の中で提供される学びの経験としては十分ではないと学生たちは感じていた。語学がだけでなく、異文化を理解し対話を生むスキルが重要であると感じており、これらは教師教育以外つまり学内の国際交流や個別の活動を通して培っていることが分かった。実際、グローバル教育やグローバル市民教育の重要性は認識されているものの、現場の担当教師の裁量に任されているのが現状であり、既存の教員養成課程のカリキュラムが持つ課題でもある。今後の研究の方向性として、先進的な「グローバル教員養成プログラム」を実施するフィンランドの大学の教員養成課程に照らし合わせながら、グローバルな展開の可能性について考察を深めるなかで、フィンランドと日本におけるグローバルな教員養成の在り方を指し示していきたい。
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