研究課題/領域番号 |
19K23312
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
長倉 守 岐阜大学, 教育学研究科, 准教授 (20734205)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 見方・考え方の構造的理解 / 本質的な問いへの変換 / 学習目標・内容の検討 / 学習活動との接合 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、実践文脈で転用可能な地理的な見方・考え方を働かせた世界地誌学習の具体的なカリキュラムについて、地理学、地理教育学、カリキュラム論の統合的な枠組みから、現場教師の認識を踏まえて、モデル単元を開発し、検証することである。 本研究ではこれまで、地理的な見方・考え方を働かせたカリキュラム開発に関する原理や実践状況の整理をもとに、地理的な見方・考え方に関する概念の解釈と世界の諸地域の学習内容の検討、それらを踏まえた目標や単元構想、指導計画等のカリキュラムへの具体的実装を行い授業を実施した。今年度は、カリキュラム論に関する先行研究を整理するとともに、開発した単元カリキュラムについて、量的・質的分析によりその特性や有効性について解析を行い、学会において研究成果を発表した。 具体的には、地理的な見方・考え方の駆動に関する生徒の自己認識では、「位置や分布」と「空間的相互依存作用」に有意差が見られた。地理的な見方・考え方の駆動に関する生徒の省察記述では、着眼点への気付き、変容の認識、困難の実感の3つのカテゴリーが析出された。これらの結果から、世界の諸地域の学習目標や内容を踏まえ、①見方・考え方の構造的理解と本質的な問いのレベルへの変換、②各学習活動と汎用性をもった見方・考え方に関する本質的な問いとの接合といった、本研究のカリキュラムの開発枠組みの特性について有効性が示唆された。学習活動を越えた汎用性のある問いの構造的な連鎖が生徒の見方・考え方の理解や駆動に作用するとともに、世界の諸地域における学習活動に埋め込まれた考察の着眼点が問いにより可視化され、学習活動への取組や思考が促進された。 こうした本研究の知見は、地理的な見方・考え方に関する学習指導要領や先行研究における概念について、教室で展開可能な単元カリキュラムとして具現化する参考点として位置付き、各学校における応用が可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、コロナ禍の影響を受け、学校における一部授業の実施時期や方法について検討を要し、研究の進捗がやや遅れていたが、開発カリキュラムの実施や分析検証が進み、研究目的の達成に接近してきた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究で得た知見について学校に対するコンサルテーションや教員対象の研修会に活用し、実践文脈で転用可能な地理的な見方・考え方を働かせた世界地誌学習の具体的なカリキュラム開発を支援する。これにより知見に関する検証を進め、研究の総括を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、主として学会及び研究協力者との検討会やインタビューがオンラインによる代替実施となり、旅費に係る支出が減少している。次年度は、本研究の実践文脈への転用可能性を検討するため、カリキュラムの検討や参与観察、コンサルテーションに係る旅費や電子記録媒体等の物品費、総括に向けて本研究で得た知見の意義を検討するための書籍代、学校におけるカリキュラム開発のためのガイドに係る印刷費等に充てる計画である。なお、海外調査についてはコロナ禍の状況を鑑み慎重に検討を行う。
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