本年度の研究の成果は、次の二点である。 第一に、中国四国教育学会第75回大会において、ラウンドテーブル「ドイツ教授学のアクチュアリティ」を主催するとともに、そこにおいて研究発表を行ったことである。本ラウンドテーブルは、日本の教育研究に大きな影響を与えてきたドイツ教授学の現在地を多角的に検討するというものであり、自身の研究発表においては、主に教員養成における教授学、授業研究の役割に焦点化して発表した。ドイツの教員養成の中で従来「一般教授学」というディシプリンに期待されてきた、授業方法に関する一般的な理論や授業に対する省察的な視点の提供といった事柄を教えるための方法として、授業研究が取り組まれていることを指摘したうえで、実際にドイツの大学の教員養成課程の中で取り組まれている授業研究のあり方について報告した。 第二に、これまで本研究によって得られたドイツにおける授業研究の理論と実践に関する研究の成果をまとめ、書籍の一部として刊行したことである。ドイツにおける授業研究の歴史、現在の授業研究を支える研究方法論、ドイツにおける授業研究アーカイブの広がり、教員養成における授業研究の活用方法などを、本研究の成果として書籍に収載した。 今後は、本研究で得られた授業研究や授業記録に関する知見の社会実装に向けて、実際に授業記録を保存、蓄積、公開していくための授業研究アーカイブの設置へと研究を展開していくことを予定している。
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