令和3年度は,本研究の開発総括段階として,プログラム開発の更なる知見を得るべく,小学校の児童対象にアーギュメント構成能力を調査する研究を行い,その成果をアーギュメントを小学校理科教育に導入するための指導能力育成プログラムに生かすことを目的とした。調査と報告書の作成は令和2年度に行ったが,令和3年度は,論文化した内容の公表を目指した。 公表した論文では,児童におけるアーギュメント自己評価能力とアーギュメント構成能力には関係があるのか,また,関係があるとすればどのような関係があるのかを予備的に検討することを目的とした。調査結果から,次の4点が示唆された。(1)アーギュメント自己評価能力が高い児童は,アーギュメント構成能力が高い傾向にある,(2)アーギュメント自己評価能力が低い児童は,アーギュメント構成能力が低い傾向にある。(3)自分が記述したアーギュメントの成否を適切に判定したり,自分が記述したアーギュメントの問題点を説明したりすることができる児童は,アーギュメント構成能力が向上していた傾向にある,(4)自分が記述したアーギュメントの成否を適切に判定したり,自分が記述したアーギュメントの問題点を説明したりすることができない児童は,アーギュメント構成能力が向上していない傾向にある。 以上の研究から,アーギュメントを小学校理科教育に導入するための指導能力育成プログラムでは,アーギュメント構成能力を高める指導能力育成を観点とした講義を行う際に,アーギュメントを自己評価する能力を育成する観点も盛り込んで学習プログラムを考案する必要性が示唆された。
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