最終年度となる今年度は、コンディヤックの『パルマ公国王子のための教程』のとくに文体教育、修辞学や思考術について書かれた『書く技術』や『推論する技術』に関する研究を行った。 コンディヤックの文体教育については、『書く技術』を分析することにより、どのような文体教育をおこなったかを実証的に提示し、その文体教育は、言語教育、修辞技術の獲得を超え、観念結合というコンディヤックの認識論において最も重要と位置づけられる精神の機能の養成をも目指したものであるということを明らかにした(「『書く技術』における文体の教育」、「関西福祉大学研究紀要」、pp.27-35、2024年3月)。 『推論する技術』の研究については、コンディヤックにおいて真理とは、同一性が担保された命題が連続して構成されるものであるということ、またコンディヤックは、ニュートンをモデルとしながら、観察に基づく「原理」、言語に基づく「論証」により、 理性の名称性に至る、つまり命題の同一性に至ることを推論の技術として、一般化、法則化し、その技法をパルマ公国王子に教育したことを明らかにした(フランス近世の〈知脈〉第10回研究会、2024年2月)。 研究期間全体を通じて、コンディヤックの教育論の大半を占める言語教育、修辞学教育そして思考法の教育について研究を行った。コンディヤックの教育論は、従来の君主教育論とは異なり、言語教育に重点を置きつつ、自律的な思考の方法の獲得も射程にしていたこと、さらには、『パルマ公国王子のための教程』の思考に関する著作、『推論する技術』や『考える技術』は感覚論哲学、認識論に基づいたものであるということを解明することができた。
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