研究課題/領域番号 |
19K23329
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研究機関 | 広島文化学園大学 |
研究代表者 |
山中 翔 広島文化学園大学, 学芸学部, 助教 (50847332)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | シティズンシップ教育 / シャンタル・ムフ / 道徳教育 / 闘技民主主義 / 政治教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はシャンタル・ムフの政治思想を全体的に把握し、その教育学における射程を検討することである。具体的な成果としては、中期ムフの闘技民主主義が道徳教育にもたらす意義について考察した報告が挙げられる(山中翔「『闘技民主主義』にもとづいて話し合い道徳の改善を試みる」第62回教育哲学会ラウンドテーブル『教育哲学研究は道徳授業にどう貢献できるか』)。 話し合い道徳とはハーバーマスの討議倫理学をベースにした道徳授業である。討議倫理学は理性的な対話にもとづいた包括的な合意形成の可能性を主張するが、ムフはこれを批判する。彼女によると、合意は対立含みの合意(conflictual consensus)でしかいないという。闘技民主主義は合意でなく、同意形成に重きを置く。これは意見の一致を求めないため、合意の失敗に伴うリスク(分断や対立)を回避することができる。本ラウンドテーブルでは活発な議論がおこなわれ、有益なコメントを得ることもできた。報告の詳細については2020年5月に発刊された『教育哲学研究』第121号を参照いただきたい。 また、ムフ闘技民主主義における「対抗者(adversary)」に関する研究をおこなった。対抗者はムフ闘技民主主義の中核概念であるにもかかわらず、教育学において十分な検討がなされていない。そこで、先行研究およびムフの著作の精読を通じて対抗者の特徴を整理し、その教育学的意義を検討した。こちらの成果は論文として全国学会誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの成果は、中期ムフ政治思想の教育学的射程を明らかにするものだと考えられる。教育学においてムフ政治思想はあくまでも合理主義的なシティズンシップ教育や道徳教育に対する批判的視座を提供するものの、その再構築のための視点を提供するものではないと考えられていた。しかしながら、本研究はムフ闘技民主主義が道徳教育の改善に貢献することを明らかにすることによって、一般的な理解の捉え直しに貢献した。 しかしながら、一方で前期ムフ思想については十分な成果をあげることができていない。こちらは現在、進行中の課題でもあり、学会発表や論文投稿を通じてその成果を発信していきたい。また、海外に限らず、国内の移動に関するリスクが指摘されている現状では、文献収集の面で限界がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画は大きく二つに分けられる。一つは、中期ムフ政治思想の教育学的意義の検討である。前述した投稿論文の評価にもよるが、全国学会誌への掲載を目標としたい。 もう一つの前期ムフ思想については、現在、文献を収集している段階であり、具体的なことを書くことは難しいものの、10月開催の教育哲学会や11月開催の中国四国教育学会での学会発表を通じてその成果を公表したいと考えている。 また、新型コロナウイルス拡大にともなう世界情勢にも依存するが、海外渡航についても引き続き検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来、購入予定の物品が事情により購入できなくなったため。差額は次年度の物品購入等に充てる。
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