研究課題/領域番号 |
19K23338
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
佐川 祥予 静岡大学, 国際連携推進機構, 助教 (70849322)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 大学生 / 実践コミュニティ / 学び / キャリア |
研究実績の概要 |
【研究目的】 本研究は、教室内外における実践コミュニティ(Community of practice(CoP))での学びを取り入れた日本語教育を行うタイ国の大学を対象として、卒業生及び教員への聞き取りをもとに大学での学びと卒業後のキャリアの繋がりについて実態調査を行い、大学日本語教育のひとつのモデルケースを示すことを目的とするものである。 【研究実施計画】 本研究では、(1)対象となる教育機関の教育枠組の提示、(2)教育現場に関わる人々の実態調査、(3)複数の手法による多角的なナラティヴ分析、(4)CoP型大学日本語教育の提言、という4つの課題を設定した。課題(1)は本年度、課題(4)は次年度、課題(2)・課題(3)は両年度にわたり行うものとし、本年度は着手の遅れていた課題(1)・(2)の推進に注力するとともに、その成果を基にしながら課題(3)を継続して実施した。 【研究成果】 課題(1)では、教員へのインタビューデータを分析し、当該教育機関の教育枠組について、Wenger et al.(2002)等における実践コミュニティの枠組に従って整理した。課題(2)では、教員・学生へのインタビューデータを分析し、実践コミュニティ概念そのものの検討を行った。課題(3)では、インタビューデータにおける学習者の語りから、他者との協働的なコミュニティを基盤にして、どのような学びと自己形成が生まれていったのかを複数のナラティブ分析手法を用いて分析した。インタビューデータの分析から得られた新たな課題点について、次年度、継続してインタビュー調査を実施していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、タイ出張と現地でのフィールドワークを予定していたが、COVID-19の影響により、出張不可となった。そのため、次年度も、年度の前半に課題(1)及び(2)のデータ収集と、課題(3)のデータ分析について継続的に実施する。また、次年度の後半に課題(4)に着手することとする。「今後の研究の推進方策」欄で示すように、本年度の遅延は挽回可能なものである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は、引き続き本計画の基盤となる課題(2)に取り組み、課題(1)、(3)、(4)についても進める。本年度はCOVID-19の影響で出張不可となったことにより、次年度も引き続き、課題(1)及び(2)のデータ収集に注力することとする。前回の出張・フィールドワークの成果を踏まえ、さらに詳細なインタビュー調査項目を設定し、聞き取りを行う。現地でのフィールドワークあるいはそれに代わる手段によって、インタビューを実施する。課題(3)については、インタビューデータを現象学的心理学の枠組み等を取り入れながら分析を行う。実践コミュニティの中で、教育者側・学習者側は何を「学び」と捉えているのか、どのような自己形成が行われているのか、といった事柄に焦点を当て、ナラティヴ分析を行う。課題(4)は、課題(3)を踏まえて年度後半に実施する。課題(4)では、大学卒業後のキャリアへの繋がりを見据えて、メンバーシップ獲得のための能力や自己形成力の観点に着目した新たなCoP型大学日本語教育のモデルケースを提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、本年度にタイでの出張・フィールドワークを計画していたが、COVID-19の影響により、実施を断念せざるを得ず、主に出張旅費について次年度使用額が生じた。次年度の予定使用額は、出張旅費726千円(当初予定額に次年度使用額を加えた額)、物品費92千円、謝金16千円、その他(通信費・印刷費等)30千円を見込んでいる。なお、出張については、COVID-19の状況を考慮しつつ、実施回数や、1回の出張での滞在期間について、柔軟に対応することとする。
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