本研究は、感化院・少年教護院が障害のある子どもへの教育を模索した過程を、地域社会や学校との関わりに着目し明らかにすることを目的とする。なかでも、後援機関の早期設立など早くから地域社会の支援を取り入れていたと考えられる、石川県、富山県の感化院・少年教護院に焦点をあてる。 本年度は昨年度に引き続き、両県の感化院・少年教護院に関する一次資料を収集し分析を進めた。その成果は次のとおりである。まず、富山県、石川県の少年教護院は、それ単体ではなし得ない事業を実施するために、地域の支援を必要としていた。具体的には少年教護法第十四条に定める一時保護の実施にあたり、いずれの少年教護院も後援機関を活用していたことがわかった。後援機関を活用した一時保護の実施過程については学術論文にまとめ発表した。 また、職業教育の実施にあたっても地域の資源が活用されていた。石川県の感化院である石川県育成院では、職業教育として筆工(製筆)を行っていた。これは全国における多くの感化院が、子どもが自活が可能な程度の技術を習得するまでの職業教育は困難と考えていたなかで、自活を目指し限定的ながら実現したものである。実現した背景には、石川県育成院が採用した筆工が比較的平易な作業であり高度な技術の獲得や学業での成功が困難な者でも習得可能であったこと、県内の各小学校に宣伝し、その協力により必要な受注を獲得したこと、感化院の教育にも深い関心を持つ優れた筆工教師を得られたこと等があった。石川県育成院の職業教育に関する研究成果については学術論文にまとめ日本福祉心理学会誌に投稿し、査読を経て採択が決定した。
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