本研究の目的は、大学教育の量的拡大に伴って生じた学生の多様化が、どのように大学中退と結びついているのかを検討することであった。当初の研究計画を大幅に修正し、歴史的に典型的な進学層ではなかった出身階層の低い学生における心理的・文化的摩擦という観点から中退メカニズムを検討した。その結果、大学内の学生層の分散が小さい場合には、学生同士の関わりが中退意思にもたらす影響が見られないこと、むしろ父親の学歴が高く典型的な学生層である場合に、心理・社会的要因による中退リスクが大きくなること、中退者は大学教育に対して明確な期待やスタンスを持っていないため、摩擦という観点は適切ではないことが明らかになった。
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