研究実績の概要 |
本研究の目的は、長期的なキャリア形成の視点に立ち、日本で就職している元中国人留学生の職業的アイデンティティ・ステイタスを明らかにし、彼・彼女らの職業的アイデンティティ・ステイタスとキャリア・アウトカムとの関連を検証することである。本研究の成果を通じて、日本で働く元中国人留学生のキャリア形成のプロセスをより深く理解し、日本企業への定着や適応を促進することが期待できる。 本年度の実績は、上述の研究目的を達成するためのアンケート調査の質問項目を作成し、予備調査を実施した点にある。アンケート調査の質問項目を作成した際、職業的アイデンティティの測定に関して、職業的アイデンティティ・ステイタスの評価モデル(6要素)の中国語版(Zhang, Chen, & Yuen, 2018)を用いた。しかし、仕事の継続意思、パフォーマンス、キャリア満足度を測定するための質問項目の中国語版を見かけなかったため、Yu, Guan, Zheng, & Hou(2017)の質問項目を順翻訳・逆翻訳・比較調整という手順を経て、中国語の質問項目を作成した。また、スノーボール・サンプリング法を用いて、日本で働く元中国人留学生133名を対象とした予備調査を実施した。予備調査のデータを分析した結果、仕事の継続意思、パフォーマンス、キャリア満足度のクロンバックのα係数が高く、それぞれの項目の内的整合性が認められた。それに対し、職業的アイデンティティのそれぞれの要素のクロンバックのα係数がやや低かったため、質問項目の検討が必要になると考えた。2020年度では、職業的アイデンティティの各項目の質問文を調整した上、本調査を実施したい。その調査結果を用いて、学会報告および論文執筆を行う予定である。
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