研究課題/領域番号 |
19K23348
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷口 利律 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (20557318)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | アフリカ教育史 / フランス植民地 / 植民地教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、旧仏領西アフリカ地域における植民地教育に関し、教育担当官の「人物」を研究の主軸として解明することにある。対象とする教育担当官は3名であり、2020年度には、そのうちの1名であるジョルジュ・アルディに焦点を当てた。 1918年から1939年のいわゆる戦間期の植民地教育観に関して、世界的な傾向として顕著であるのは、宗主国側の教育研究者から、宗主国の教育制度を植民地に直接移植することに対する異議が唱えられるようになったことである。仏領西アフリカにおいても、教育内容を西アフリカの文化習慣に適応させる教育改革が試みられるようになった。ジョルジュ・アルディは、その準備段階として位置づけられる1910年代から1920年前後の教育改革を主導した。アルディはフランス植民地における教育関連職を歴任し、パリの植民地学校校長などに就いた人物でもある。 アルディの植民地観の特徴は、植民地心理学という独自の視点を用いて、旧来のフランスによる原住民の同化政策を心理学的な誤りであるとみなした点である。それゆえ、フランスへ一律に同化させるような政策ではなく、植民地行政官が植民地の歴史や地理、言語などを学び、現地の状況に習熟することで、同化主義から脱却した新たな植民地観に根差した統治が行えるような方向づけを行った。仏領西アフリカの植民地教育で用いられる教材に関しても、アフリカの学校教育に特化した内容の教材作成を後押しし、積極的な利用を奨励した。 しかし、こうしたアルディの教育改革は、あくまで植民地支配の円滑化を主眼として行われたものであった。彼の著作には、政治的理由から学校教育を重視し、植民地学校と植民地支配の持続のために、教育内容を現地へ適応させることが必要であることが述べられており、教育の現地への「適応」の必要性は、アルディが仏領西アフリカの植民地教育に携わった全期を通して明確に意識されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本調査年度では、フランスおよびセネガルでの文献調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大のため、渡航を中止した。このため、資料の収集方法をオンラインや、フランス海外関係公文書館など国内外の教育研究機関の図書館からの取り寄せへと変更した。しかし、当初予定していた資料をすべて収集することは困難であり、当初の研究計画よりもやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
研究にやや遅れが生じたため、研究期間を1年間延長し、本来2020年度内に予定していた研究の総括を2021年度に行う。 2021年度には、2020年度に収集することができなかった資料に関し、オンライン上または現地からの現物の取り寄せでの収集を試みる。3名の教育担当官の教育理念と実施した教育政策の内容を踏まえつつ、研究の最終的な総括として、植民地教育の包括的な捉えなおしを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度には、フランスおよびセネガルでの文献調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大のため、渡航を中止した。このため、次年度使用額欄に記載された金額が発生した。資料の収集方法をオンラインや、国外図書館からの取り寄せへと変更し、2021年度も引き続き研究を行う。
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