早産児や低出生体重児では認知的に不注意症状が見られることが報告されている。この不注意症状はADHDの診断閾値下と評価されることがあり、ADHDの不注意症状と早産児・低出生体重児の不注意症状とは認知的に異なる可能性があると考え、両対象にWISC-Ⅳを施行し、その認知プロフィールを比較した。 IQ80以上で感覚器や運動器に障害を持たない小学校1-2年生の不注意症状をもつADHD20名(神経医の診断とADHD rating scale家庭版で不注意項目が80%tile以上をもつ児童)と1500g以下で出生した49名を対象とした。WISC-Ⅳを施行し、その認知プロフィールを比較した。結果、ワーキングメモリーの課題である数唱および語音整列の評価点において、不注意症状をもつADHD児に有意な評価点の低下を認めた。また、処理速度の課題である絵の抹消課題の評価点において、1500g以下で出生した児童に有意な評価点の低下を認めた。 ADHDと低出生体重児として出生した児の認知機能の比較は報告がない。今回の検討では複数の項目の評価点に差がみられ、ADHDの不注意症状と早産児・低出生体重児の不注意症状は認知的に異なることがわかった。早産児・低出生体重児は作業の遅さや視覚情報処理能力の低下が報告されており、絵の抹消課題の評価点に低出生体重児の認知機能に低下が見られたことは矛盾しないと考えた。不注意症状は学校の成績や学習技能に影響が大きく、学習支援の方法を検討する上で、重要な結果が得られたと考えている。
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