本研究は、芸術を学校教育全体に浸透させるという思想の下で教育活動を行っている自由ヴァルドルフ学校に着目し、そのカリキュラムと具体的な造形教育の内容を国内外の学校の比較分析から、造形教育の本質を解明することを通して、この学校の造形教育の独自性と展開を明らかにすることを目指した。2019年度での活動を今年度は発展させ、国内外のヴァルドルフ教育を行う学校に訪問調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で、学校の閉鎖などもあり、現地での調査が困難になった。そのため、国内外の資料収集と文献調査およびオンラインでの調査に切り替えた。 国内外のヴァルドルフ教育の実践者や研究者との継続的な情報交換の結果、20年前に出版された世界60か国における展開が紹介されている文献を手に入れることができた。その日本語訳も携わった監修者と交流の機会ももつことができた。100周年を迎えた最新の動向を調査する上で、比較の材料になりうる重要文献である。また、個別の学校の事例として、昨年度末に訪問したドイツのボーフムやニュルンベルクの学校でそれぞれの学校の節目の年に出版された書籍、校内向けに発行される非売品の冊子の一部も学校関係者から譲りうけた。これらの研究資料を調査することで、学校が創設されてから数十年ごとの各学校が直面した課題や独自の展開を明らかにすることができた。 なお、昨年中止となった学会発表は、同内容を美術科教育学会愛媛大会で発表した。そして、発表内容を加筆修正したものを学会誌および分担執筆の著書において公表した。
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