本研究の目的は、色彩と感情の関連性を、認知心理学的実験課題を用いて検証し、色彩感情を構成する認知心理学的モデルを考案することである。本研究の科学的な意義は、表情やそれに伴う色が色彩感情の成り立ちに寄与しているかを心理学実験データから実証することである。 これまでに色彩と感情の関連性に関するデータの蓄積と、表情判断における顔色の影響に関するデータの再分析と表情の感情価測定実験を行った。1) 色彩と感情の関連性に関するデータの蓄積では、Plutchik(1980)が提唱するより多様な8つの基本感情に基づく24感情について、色彩と感情語の関連について実験を行った。その結果、Takahashi & Kawabata(2018)の結果と共通した傾向が得られた。2) 表情判断実験に関するデータの再分析では、表情判断における顔色の影響は、男女によって傾向が異なることが示された。3) 表情判断における顔色の影響に関連して、各表情の顔色による感情価の変動を調べた。これまでの実験で、怒り、悲しみ、喜び、無感情の表情のそれぞれの表情に関連する色(典型色)と関連しない色(非典型色)を顔色として反応を比較した結果、表情の典型色は表情判断を促進することが示された。この結果から典型色が感情価(受容した感情の強さ)を変動させ、表情判断に影響していると仮定した(例.表情に対する感情価が高ければ、表情判断しやすくなる)。各表情の感情価を調べた結果、同じ表情でも、その表情の典型色は、感情価を高めることが示され、感情価と表情判断の関連するという仮説が支持された。さらに、3)の表情の感情価に関する実験をオンラインで実施し、対面での実験実験結果と比較し、対面実験とオンライン実験で類似した結果が得られ、オンライン実験を進める指標を得た。現在はこれらの実験結果について、論文投稿執筆中である。
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