研究課題/領域番号 |
19K23364
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
難波 修史 国立研究開発法人理化学研究所, 科技ハブ産連本部, 研究員 (20845961)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 表情 / 感情 / 笑顔 / 文化心理学 |
研究実績の概要 |
日本人は西洋人と比べて情報を処理する際に文脈を極めて重視するという文化的特徴を持つことから,本研究では文化間研究の違いを生み出す理由として実験で用いられた笑顔の文脈情報に着目し実験を行った。参加者は笑顔および文脈情報を独立あるいは同時に観察し,表情の意図性および自発性に関する評定値を通して笑顔の自然さを評価した。なお文脈情報は親密性に関わる社会的な場面と個人のポジティブな体験に直接関連する場面の二種類を用意した。課題はオンライン実験プラットフォームを用いて各課題での評定値を比較した。その結果,「親和的な状況で表出された」という文脈情報が呈示された場合には日本人は西洋人よりも呈示された笑顔が「意図的に作成された笑顔である」という判断を行った (研究1)。本研究の成果は、Journal of Cultural Cognitive Science誌に採択され出版された。次に、文脈の有無が笑顔表出者に対する信頼行動に及ぼす影響についての研究を行った (研究2)。具体的には,健常成人約260名に対して、文脈情報を操作 (親密・幸福) したうえで、表情表出者に対する報酬の分配額を参加者が規定する信頼ゲームを課した。信頼ゲームにおける表情表出者に対する提供額を信頼行動の指標として使用した。その結果、いずれの条件についても有意な違いが得られなかった。すなわち、「より自然な笑顔である」と判断される笑顔も「より意図的な笑顔である」と判断される笑顔も、同様に一定の信頼を確保することができることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和二年度では研究1の成果をJournal of Cultural Cognitive Science誌に出版することができた。しかし、新型コロナの影響および申請者の異動(広島大学から理化学研究所)により、研究2の実施および成果に関する公表・出版が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに明らかにしてきた研究2に関する知見を査読付き国際雑誌に掲載させることを目指す。また、文脈情報の有無がその人物が重要な人物であるかどうかを潜在的に反映しうる顔記憶の成績にも影響を及ぼすかも併せて検討することでさらに詳細な情報を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種国内・国外での出張が新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年度中に実施できなかったため。 関連研究の出版・OA費用として翌年度分の助成金を利用予定である。具体的には研究2において文化差が生じなかった理由として形態的側面に着目した分析をさらに行う。また、個人特性が他者の表情認知に及ぼす影響についても考察を深め、研究2およびそれらに関する公表・出版をめざす。
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