本研究は、一般の人々が持つトラウマに関するしろうと理論を明らかにし、一般の人々と支援者におけるトラウマへの対処の有効性についての信念・認識の比較を行い、予防的心理教育開発に向けた要因の解明を目的とした研究であった。 本研究によって、トラウマ体験後の症状や疾患の“緩和”や“予防”という観点のもと、適切な支援につなぐために、一般の人々が持つ素朴な概念(しろうと理論)を検討することにより、予防的心理教育の要因を明らかにすることにつながると考えられる。 今年度は新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた対象施設ではなく、オンライン調査を活用し、対人援助職を対象とした認識の調査を行った。 さらに、「現場で出会うトラウマを身近に考える」と題したシンポジウムにおいて、これまでの研究成果などを基に、トラウマインフォームドな視点からどのように見立てを行うか、について報告を行った。 本研究の結果、一般の人々だけではなく、対人援助職においても「トラウマ」に関連する認識は正しいとは言えないことが明らかとなった。行政機関の心理・福祉職や学校教育現場の教職員などは知識が浅いことは予測されたが、医師や看護師であってもトラウマは一生治ることはない、など破局的なイメージを持っていることが明らかとなった。一般的に精神科や心療内科などにファーストアクセスする者は少なく、プライマリケアを利用する者が多いと考えらえれることから、精神科や心療内科以外の医療専門職においても心理教育における普及が急務であると考えられる。
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