ギャンブル障害に対する心理的支援として、認知行動療法がギャンブル行動の低減に対して一定の効果を有することが示されている。しかしながら、ギャンブル障害には問題行動の維持メカニズムの異なる状態像が混在することが示されているものの、それぞれの状態像の特徴に応じた支援技法として十分に体系化されているとは言いがたい現状にある。以上のことを踏まえて、本研究は、ギャンブル障害に対する心理的支援の精緻化を目指す一環として、問題行動の維持メカニズムに基づく状態像の差異に応じて、認知行動療法プログラムの体系化を行うことを目的としていた。令和3年度は、前年度から継続して、医療機関に通院しているギャンブル障害患者を対象として、適応行動の遂行に影響を及ぼす要因を検討する実験研究(研究3)、および状態像の差異に応じた集団認知行動療法プログラムの効果を検討する介入研究(研究4)のデータ収集を進めた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う緊急事態宣言が発令されていた期間中は、研究協力先の医療機関におけるデータ収集を中止せざるを得なかった。そこで、コミュニティサンプルを対象とした追加の調査研究を実施し、ギャンブル障害における適応行動の遂行を阻害する認知的要因の検討を行った(研究5)。その結果、ギャンブル障害のスクリーニング尺度である修正・日本語版South Oaks Gambling Screen(斎藤,1996)の得点がカットオフを超える者においては、認知的フュージョンが強いほど適応行動が遂行されにくいことが示唆された。
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