研究課題/領域番号 |
19K23375
|
研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
森 朱美 (大杉朱美) 福山大学, 人間文化学部, 講師 (10847817)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 隠匿情報検査(CIT) / ポリグラフ検査 / 情報検出 / 覚醒 / 記憶 |
研究実績の概要 |
本研究は、今日の犯罪捜査に広く活用されている隠匿情報検査に、犯行時の興奮・緊張といった覚醒状態がどのように影響するかを検討するものである。特に、実務検査で用いられる皮膚電気活動や心拍等の自律神経系指標に及ぼす効果について、操作や条件を変えた3つの実験から検討し、検出メカニズムの解明及び実務検査の精度向上に貢献することを目指している。 ここでは、覚醒操作は2つの手法を用いており、1つは模擬犯罪課題時に刺す対象を変える手法(実験1)、もう1つが 模擬犯罪課題前の覚醒状態を異なる覚醒喚起画像を注視させることで操作する手法(実験2)である。その後の隠匿情報検査は、実験1、実験2ともに同様であり、課題で用いた刃物の画像(裁決:例えば包丁)と課題では用いていない複数の刃物の画像(非裁決:例えばカッター、アイスピック等)を順に提示し、高覚醒群・低覚醒群における各刺激に対する自律神経系反応を比較するものとする。実験3では、実験2と同様に後者の覚醒操作手法を用い、隠匿情報検査時に刺激を閾下(刺激が意識できないほど短時間)で提示する条件を加える。刺激が意識できなくても覚醒の効果が生じるか否かを検討することで、覚醒の効果がどの程度頑健なのかを実証する。 補助事業期間1年目において実験1を実施することを計画していたものであるが、新規機材の納入が遅れたことから、現時点では予備実験の実施及び実験環境(特に模擬犯罪課題の環境)の整備を終えるに留まっている。補助事業期間2年目には新規機材の納入を終える予定であることから、早急に実験1を実施し、残る実験2及び3の遂行へと移行したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで、実験条件の詳細な設定をするとともに、測定用のシールドルームや模擬犯罪課題用の実験室の環境を整えながら、実験1の予備実験を進めてきた。本来であれば、補助事業期間1年目において実験1のすべてを終えている予定であったが、交付決定後に、予期せず大学の予算で既存の実験装置が新しく大幅に更新されることが決定した。機材とソフトの両面での大幅な更新であり、新たな解析法も導入可能であることから、すべての実験で使用機材を揃え、かつすべての実験を新装置で行うことが適切であると判断した。したがって、新装置の納入を待って本実験を行う予定としていたが、新装置の納入が予定より大幅にずれ込む事態となった。このことから、残念ながら当該年度中に実験1を終了することができず、次年度以降に持ち越すこととなったしだいである。 また、別途「産前産後の休暇、育児休業の取得又は海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長承認申請書」を提出しているが、交付内定後の妊娠発覚により、思うように実験準備が進められなかったことも計画通りの遂行が遅れた一因であることも確かである。復帰後には上記新機材の納入も終えているはずであることから、復帰後にきちんと遂行できるよう努めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの進捗状況」及び別途提出済である「産前産後の休暇、育児休業の取得又は海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長承認申請書」の通り、約11か月の研究中断後に研究を再開する予定である。再開後は、上記の新規機材の納入を終えているものと想定されることから、再開後は早急に実験1を終え、その後実験2及び3の実施に取り掛かる予定である。実験2については、実験1とほぼ同様の手続きで実施可能であることから、予備実験も最小限で行うことができる。実験3については、実施にあたり別途準備が必要であることから、実験3に多くの時間を当てることができるよう計画する予定である。その際、条件設定に必要な装置及び分析に必要なソフトの追加導入が必要となることから、納入に遅れが生じることのないよう、早めに申請していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、当該年度に大学の予算で既存の実験装置が新しく大幅に更新されることが決定したことから、すべての実験を新装置で行う方が適切であると判断した。当該年度は実験環境を新しく整えるため、旧装置で進められる範囲の予備実験を繰り返し、そのための消耗品の購入を行ったものである。その他のものについては、新装置導入に合わせて購入予定であったが、結果的に新装置の納入が予定より大幅にずれ込み、当該年度の終了に間に合わない事態となった。したがって、次年度以降の使用が必要となったしだいである。 実験3の実施にあたり、閾下刺激提示に必要な装置及び分析等に必要なソフトの導入が必要となるため(いずれも50万円以下)、再開後早々に購入を予定している。 なお、別途提出済である「産前産後の休暇、育児休業の取得又は海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長承認申請書」の通り、約11か月の研究中断後に研究を再開する予定であることから、予算についても次年度ではなく2021年度に使用する予定である。
|