研究実績の概要 |
本研究課題では、心理学・神経科学的手法を用いて、味の印象を形成する感覚間協応について検討した。感覚間協応とは、視覚・聴覚・味覚のような異なる感覚が相互に影響する性質である。しかし、これまで聴覚要素と味の関係についてはよくわかっていなかった。そこで、視聴覚要素がいかに味の印象を形成するかについて一連の研究を行なった。 本年度は聴覚要素に着目して、味の印象を形成する感覚間協応について検証した。実験参加者はクラウドソーシングサイトで募集した。実験は、オンラインのアンケートプラットフォーム(Qualtrics)で実施した。実験参加者は、4種類の音声刺激(modal, whispery, creaky, falsetto)を聞き、味 (甘味/酸味/塩味/苦味/うま味) との相性を回答する課題を行った。結果として、音声と個別の味との相性が明らかとなった。Falsettoは他の音声刺激(modal, whispery, creaky)と比較して、甘味とより相性がいいと評価されていた。また、creakyは他の音声刺激(modal, whispery, falsetto)と比較して、苦味とより相性がいいと評価されていた。酸味・塩味・うま味と音声刺激との相性に関しては、一貫した結果が得られなかった。さらに、感情・意味的次元が音声ー味の相性を媒介しているかどうかを検討した。結果として、特に感情価・評価次元が一部の音声ー味の相性を媒介していることが明らかとなった。この成果は現在投稿中である。 また、視覚的要素(カフェ店舗画像)と味の関係についても検討した。色と味の関係を明らかにしたこの成果は、食心理学分野の代表的な国際査読誌であるFood Quality and Preferenceに掲載された。
|