本研究では,注意の範囲という認知的情報処理に焦点を当てたうえで,反すうの持続過程を検討することが目的である。本研究は大きく2つの研究で構成され,2020年度は研究2としてネガティブ気分下での注意の範囲の狭小化が反すうに及ぼす影響を検討した。研究2のデータ収集およびデータ分析は完了しており,最終的に大学生と大学院生42名を分析対象とした。研究2の結果から,まず,ネガティブ気分誘導後の注意の範囲の操作は妥当であったことが確認された。そのうえで,注意の範囲を狭める操作を行うと状態反すうが悪化する可能性が示され,仮説を支持する結果が示された。当該の研究成果は日本心理学会第84回大会で発表され,公益社団法人日本心理学会学術大会優秀発表賞を受賞した。 本研究の結果を総括すると,2019年度に実施した研究1の結果から反すうは注意の範囲を狭めることと,2019年度と2020年度に実施した研究2の結果からネガティブ気分を経験しているときに注意の範囲が狭くなると反すうが悪化する可能性が示された。これらの結果から,反すうと注意の範囲の狭小化は互いに影響しあうことで反すうが持続すると考えられる。 また,本研究を遂行するにあたり,患者報告式アウトカム尺度(PROM)の信頼性と妥当性およびPROM研究のバイアスのリスクを評価する必要性が考えられた。そのため,PROM研究に関する国際的なガイドラインであるCOSMINの原著者から許可を得て,COSMINバイアスのリスクチェックリストの翻訳を現在進めている。加えて,COSMINに基づくPROMの評価についてレビュー論文を執筆し,現在査読付きの学術誌に投稿中である。
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