研究課題
ヒトと霊長類の視覚野では、反対色(赤・緑/青・黄)のほかに、中間色(紫、橙、シアン、黄緑など)に選択的に反応するニューロンの存在が、多数報告されている。一方で、発達初期の視覚野の色相選択性がほとんど検討されていない。本研究では、乳児を対象に、定常状態視覚誘発電位(SSVEP)を用い、視覚野における色相選択性の発達を解明することを目的とする。錐体コントラスト空間で定義する色相環を8等分し、対応する8色をテストした。5Hzでフリッカするチェッカーボードパターンを刺激として、1試行1.6秒で1つの色相を乳児に呈示た。SSVEPデータの分析では、異なる色相を観察している時のSSVEPの振幅と潜時を計算し、各色相の違いを解析した。昨年度では、5-6ヶ月児30名をテストした結果、中間色に誘発されるSSVEPの振幅は、4つの錐体コントラストで定義する反対色(赤・緑・青・黄)よりも強かった結果が観察できなかった。この結果から、5-6ヶ月児において中間色に対する選択性がまだ発達していないことと、乳児の視覚野の情報表現では、反対色メカニズムが支配的であることが示唆される。さらに、成人のSSVEP反応潜時と異なり、乳児では青・黄軸において黄色方向よりも青方向の潜時がより短かったという非対称性がみられた。一方でこの非対称性に赤・緑反対色軸には観察されなかった。これは、反対色の青・黄チャンネルの発達が特殊性をもっていること可能性が考えられる。これからは、この発達の特殊性を着目して研究を展開していくと計画している。
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チャイルド・サイエンス
巻: 22 ページ: 49,53