研究課題
2020年度は,新型コロナウイルス感染症対策の関係上,人を対象とした研究における制約の中での研究の実施となった。その中で,自律神経系反応と脳血流動態反応の同時計測を実現した環境設計の中で,模擬犯罪を行う群(guilty群)と行わない群(innocent群)を実験実施可能な範囲の中で計測した。その結果,両群の中で異なる反応が確認された。現在,自律神経系反応と脳血流動態反応の関係性について精査し,理論的基盤を明らかにするために引き続きデータの解析を行っている。今後,新型コロナウイルス感染症対策の状況を鑑みながら,実験を行い,データを増やしていく予定である。新規データを増やすことの困難さを受けて,既存のデータからの研究の発展を志向して,機械学習によるguilty群とinnocent群の判別可能性も試みた。その結果,90%程度の精度で,guilty群とinnocent群を判別できることが示された。従来の脳機能イメージングを用いたポリグラフ検査においては,主に,模擬犯罪を行った群とそうではない群についての「集団レベル」での脳活動の差異に焦点が当てられてきたが,実際の犯罪捜査への応用を考える際には,「個人レベル」での被疑者の反応の重要性が強調される。今年度の研究実績は,そのような現場志向の視点からの,個人レベルでの「事件情報を知っている犯人かどうか」の判別を可能とした点で大きな意義があると考える。現在,国際論文として出版するために,投稿準備中である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Frontiers in human neuroscience
巻: 15(26)
10.3389/fnhum.2021.593108