研究課題
本研究の目的は,高齢者を取り巻く環境要因を物理的・社会的環境がの両面から包括的にとらえ,メンタルヘルス並びに個人の社会的環境への認知の加齢変化を検討することである。2019年度は,収集済みの調査データと対象者の居住する地域の物理的環境データとをGeographic Information System(以下;GIS)を用いて結合を行い,物理的環境とメンタルヘルスとの関係を検討した。具体的には,GIS解析ソフトを用いて,対象者周辺の施設として,生活用品店や銀行などの生活に必要な施設の数を,徒歩圏内(半径1㎞)で収集した。併せて,居住地周辺の平均の土地傾斜,標高を計測した。これらの物理的環境の要因が,高齢者のメンタルヘルスに与える影響について,高齢者個人の身体能力・居住地域(都市部・非都市部)別に検討を行った。結果として,都市部在住の身体機能が高い高齢者は、徒歩圏内に目的地が多いほど精神的健康が良好であることが示された。一方で、非都市部在住の身体機能が低い高齢者は、居住地の傾斜がなだらかなほど精神的健康が良好であることが示された。これらの結果方,物理的環境とメンタルヘルスとの関係を検討する際に個人の能力だけでなく,居住地域を考慮する重要性を示唆するものであった。これらの結果は,アジア/オセアニア国際老年学会(IAGG_AOR2019)で発表され,Outstanding Presentation Awardを受賞した。
3: やや遅れている
当初の計画では,2020年度に新たにデータ収集を行い,2019・2020年度の2つのデータセットで,9年間の縦断的な変化を検討する予定だったが,コロナウイルスの影響から調査自体が取りやめとなってしまった。
社会的環境とメンタルヘルスとの関係について検討した論文を現在査読修正後,再投稿中である。2020年度に予定していたデータ収集ならびにデータ数の増大は見込めないため,2019年度だけの少ないデータセットで分析可能なモデルを検討中である。新規の収集はできないため,GISを用いた新たな情報(生活施設への最短距離や,分析対象者間の距離等)の収集,計測を行う。また,学会発表予定(誌面での発表)の,物理的環境と社会的環境との関係性についての論文を執筆,投稿する。
当初予定した,大阪府での研究打ち合わせ及び内容の発表が,新型コロナウイルスの関係からキャンセルとなったため。
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