ヒトは2人で交互に運動する場合、互いに他者の運動を予測し運動タイミングを調整する。この協調運動を生み出す心理・ 生物学的基盤を探るため、本研究では動物モデルを用いた実証研究を行った。 このターンテイキングは野生下の動物も行うが、それらは他個体の発した刺激への応答の繰り返しによる反応連鎖として説明が可能である。動物が新規なパターンのターンテイキングを獲得するのかを、定間隔で呈示される刺激へのリズム同調と他個体の運動の模倣・同調を行うセキセイインコを対象に検討を行った。 オペラントボックス2つを対面させ、それぞれのボックスに入ったトリが互いのライト・姿が見える状況で課題を行った。点灯したライトはトリがつつくと同時に消灯し、定間隔後(条件によって、300msもしくは400ms)に、他個体側のライトが点灯した。点灯したライトのボックスに入ったトリがつつくと、反対側のライトが点灯するというように同様のシーケンスが繰り返された。これが6回連続で繰り返されると、2個体同時にエサ報酬が与えられた。セキセイインコはタイミングを予想し運動するため、ライト点灯前に僅かな長さのヒット枠を設けた。参加個体3羽の総当りから成る3ペアがこの課題を遂行した。この運動課題後、参加個体の社会的選好を、滞在時間を指標とした選好テスト、およびコールの類似度分析により検討した。 互いが予測的に反応するという協調的なターンテイキングはみられなかった。しかしながら、①ペア個体のうち1羽はライト点灯前につついており、ライト点灯への反応連鎖だけでは説明がつかない行動が観察された。②参加個体のうち1個体(オス)は選好の高いメス個体とペアになった際に、より速くつつくことが示された。消灯後の間隔が異なっても、これらの結果は一貫しており、他個体依存的な協調運動が獲得されることを示した。これらの成果をまとめ国際誌に投稿を行った。
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