研究課題
日本の若年成人層における抑うつ状態は高いと報告されている。また、近年、注意欠如・多動症(ADHD)傾向などの発達障害圏の大学生が抑うつ状態などを訴えて学生相談に来ることが増加している。ADHD傾向があると、その特性のために対人関係の困難をきたしやすく、二次的に抑うつ状態を呈しやすい。そこで、ADHD傾向のある若年成人層の抑うつ状態に対するカウンセリング方法の有効性について実証的研究が望まれる。対人関係カウンセリング(IPC)は対人関係療法から派生したカウンセリング方法であり、具体的なストレスコーピングを習得させる要素を持ち、うつ病の診断に至らない抑うつ状態に対する効果が科学的に検討されている。IPCは構造化(原則3回、1回50分)されたカウンセリングであり、非専門家でも修得が容易であることから種々の相談場面で広く活用が可能と考えられる。本研究では、ADHD傾向のある若年成人層を対象とし、IPCを行う群と通常のカウンセリングを行う群の2群間において、その有用性を比較することを目的とした。2019年11月に研究者の所属する大学の倫理委員会で研究の承認を受け、研究を開始した。まず予備的検討として、研究者が行った先行研究のデータを用い、ADHD傾向を持つ対象者についての部分解析を行った。その結果、ADHD傾向を持つ対象者の抑うつ状態に対するIPCの長期的効果の可能性を見出した。2020年2月末から2020年6月まで新型コロナウィルス感染症対策のため研究を中断したため、ADHD傾向のある若年成人層5名を対象にIPCを実施するにとどまったが、ADHD傾向のある若年成人層の抑制反応下における前頭前野の血行動態の改善への効果の可能性を示唆する結果を得た。この結果はThe Journal of Physical Therapy Science などの学術雑誌へ投稿中である。
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