構造保存数値解法は長時間挙動などにおいて非常に優れる代わりに計算量が大きくなるという問題を抱えることが多い.そこで,計算量を削減するための手法は既に各種検討されており,特に近年は盛んに研究されている.昨年度までに引き続き,まずは常微分方程式に対して近年提案されたSAV (scalar auxiliary variable) 法やLagrange multiplier法に関して研究を行った. 今年度は,本研究の序盤から取り組んでいた二次の保存量をもつ常微分方程式に対する陰的線形かつ高精度な構造保存数値解法について,成果をとりまとめた論文を投稿し,受理された.また,国際学会での発表も行った.二次の保存量は様々な保存系で自然に現れるだけではなく,上述のSAV法などで各種の保存系を再定式化した際にも現れるため,提案手法が利用できる微分方程式は数多く存在する.従来知られていた高精度な構造保存数値解法は,非常に大きな非線形方程式を解く必要があり,計算量が大きくなりすぎるという欠点があったが,提案手法は線形方程式を解くだけでよく,計算量が大幅に削減されている.
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