研究課題/領域番号 |
19K23402
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 雄太 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 博士研究員 (30852199)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 素数の加法的問題 / 指数和 / 原始過剰数 / 滑らかな数 |
研究実績の概要 |
素数と平方数の和の表現関数の短区間中の平均に関する自身の手法において、Weyl差分ないしはvan der Corput差分を導入した影響を観察することができた。しかし、いまのところの結論としては、これら手法の効果は否定的であることがわかってきた。特に、小林弘京氏との共同研究を通して、素数と素数の平方の和について考えるときには、Riemann予想を仮定してようやく非自明な結果が出るのみであり、さらに違う手法を導入する必要性が見えてきた。他の手法の検討として、指数和を通さずに明示公式のみで平均値を計算する方法にも取り組んだが、こちらについてはRiemann予想を仮定しても非自明な結果が得られない事がわかった。 新しい研究テーマとして、Ivicによる原始過剰数の個数関数に関する予想に取り組み、予想を支持しつつ明示的に与えられていなかった定数を決定する組合せ論的なheuristicsを得た。しかし同時に、このheuristicsは素朴な篩法に見られるような誤差項の組合せ論的爆発が見られるため、部分的に数え上げを諦めて不等式で置き換えなければならないことを観察し、Vinogradovが素数に渡る指数和に使ったような滑らかな数を用いた和の分割が有効なのではないかという着想も得た。 また、Biswajyoti Saha氏とAyyadurai Sankaranarayanan氏との共同研究により、HildebrandとTenenbaumによる滑らかな数の個数関数の漸近公式のさらなる展開を得ることができ、論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
素数の加法的問題の表現関数の短区間中の平均についての自身の手法に指数対は導入できないながらも、van der Corput差分の効果がどの程度現れるか観察がまとまった。しかしその結論としてはvan der Corput差分の効果はほぼ引き出せないだろうという否定的な観察しか得られなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
いままで線形項側に明示公式を適用した後に指数和の打ち消し合いを観測することを試みてきたが、非線形項に素数を含む場合はこの道筋では結果の改善が見られないので、非線形項に明示公式を適用する方法について考察する。すでに線形項側に明示公式を適用した場合の指数和の取り扱いについては、結果が改善できないながらも形が決まりつつあるので、この知見を新しい方法に対して活かす。また、新しい研究テーマである原始過剰数について得たheuristicsを正当化する方法を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響により、予定していた国内外の研究集会への参加や共同研究打ち合わせが不可能になったため。翌年度分は新型コロナ感染症の影響が収まり次第、これら研究集会や共同研究打ち合わせのために使用し、影響の長期化が見込まれる場合には図書や計算機の購入に充てる。
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