研究実績の概要 |
新しい問題のテーマとして, Bordelles--Dai--Heyman--Pan--Shparlinskiらが研究を始めた, 数論的関数の[x/n] (1≦n≦x)といった数列の上での平均値について考察を始めた. 特に, 分母の自然数nを素数pに制限した場合を考察している. 数論的関数が約数関数程度の大きさであれば, 主要項の整理に多少の議論は必要であるが, 比較的容易に平均値を計算可能であることを観察した. Euler totient関数の[x/n] (1≦n≦x)に渡る平均値はBordellesらが予想を提出しZhaiがVinogradov--Walfiszの手法を用いて解決した. この拡張として, Euler totient関数に対して, [x/p] (1≦p≦x)という形の数列上で平均値を取るという新しい問題を得た. この問題に対しては, Zhaiの議論ではCauchy--Schwarz不等式によって避けられていた素数に渡る指数和やMobius関数を含む指数和の取り扱いが, 本質的に必要になるであろうという観察を得ているが, まだ詳細な計算は行っていない. また, Henrik Bachmann氏, 門田慎也氏, 山本修司氏, 山﨑義徳氏とのSchur多重ゼータ値の和公式に関する結果を論文の形にまとめた. この論文には, 多重ゼータ値の関係式には種々の和公式(重さ一定の多重ゼータ値たちの和や一定の形の係数の線形結合がより「簡単」な形に帰着できるという関係式)があるが, これをSchur多重ゼータ値へ拡張した結果がいくつか含まれる. 特に以前から共同研究で得ていたhook型のSchur多重ゼータ値の和公式をcornerが2つあるribbon型のSchur多重ゼータ値へと拡張したものを含んでいる. 手法としては種々の調和積に類する和の変形を含む研究であるため, この共同研究の知見を今後の自身の指数和の分解の研究へ活かせるのではないかと期待している.
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