研究実績の概要 |
本研究では、幾何学的群論の手法を用いて、単位円の向きを保つ自己同相写像の成す群の有限生成無限部分群の構造を調べている。 特に、Thompson群と呼ばれる有限表示無限単純群とその一般化に注目して、非正曲率距離空間への群作用の固定点性質を研究している。Thompson群とその一般化が, どのような空間上の群作用について固定点性質を持つか」という問題は, Thompson群の従順性とも関連する重要な問題である。本年度はKim-Koberda-Lodhaの構成した向きを保つ自己同相写像の成す有限生成群のクラスに注目し、それらの群が非正曲率距離空間への群作用の固定点性質を持つことを示した。先行研究により,「Thompson群Vとその一般化は有限次元CAT(0)空間への群作用について固定点性質を持つ」ということが知られていた。本年度の研究では, この結果をThompson群Tの場合にも一般化し、円の自己同相群の成すある種の有限生成群が有限次元CAT(0)空間への群作用について固定点性質を持つことを証明した。具体的には、これらの群が有限生成CAT(0)空間に半単純作用を持つとき、これらの群の交換子部分群の有限生成部分群が大域的な固定点を持つことを示した。このことより、「Higman-Thompson群が有限次元のCAT(0)空間への作用に対して固定点性質を持つ」という系が従う。この結果を論文にまとめ、プレプリントサーバーarXivで公開した。また、2021年3月に行われた研究集会「Thompson群とその周辺」にて研究発表を行った。
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