研究実績の概要 |
当該年度は、完全交叉特異点のDurfee型不等式への最初の段階として、ファイバー多様体のスロープ不等式の研究を行った。特に、主に3次元ファイバー多様体で一般ファイバーが標準体積1、幾何種数2の一般型曲面(以下(1,2)曲面と呼ぶ)であるようなものに対して焦点を絞り考察した。このファイバー多様体は、スロープ不等式に関するBarja-Stoppino予想の反例となる多様体であり、また、相対標準写像などから自然に定まる2重被覆の構造を通して、3次元超曲面2重点のDurfee型不等式とも関連があり、興味深い対象である。 具体的には、まず(1,2)曲面を一般ファイバーに持つ3次元ファイバー多様体に対して、その相対標準写像は基点解消を取ると種数2の曲線束となり、さらにその相対標準写像を考えStein分解を取ると、2次Hirzebruch曲面束上の2重被覆となることを確認した。また逆に、2次Hirzebruch曲面束上の超曲面で一般ファイバーが(6,10)型の曲線となるものを取り、それを分岐因子とする2重被覆を取り特異点解消を取ると、(1,2)曲面のファイバー多様体を得ることを確認した。分岐因子の特異点の数値的不変量が、(1,2)曲面のファイバー多様体の不変量やスロープを決定していると考えられる。堀川氏の標準解消を用いて分岐因子と対応する2重被覆の同時特異点解消を取ることにより、分岐因子の特異点とファイバー多様体の不変量の関係を考察し、いくつかの部分結果を得た。
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