本年度は、赤堀次郎氏(立命館大学)および元大学院生である仙葉隼裕氏と、Bernstein作用素の一般化である Szasz-Mirakyan作用素のiterationに対応するランダムウォークのdiffusion approximationについて確率論の視点から考察した。前年にSzasz-Mirakyan作用素のiterationに関する極限定理の確率論的な証明を与えることに成功したが、その続きとして、以前に構築したTrotterの半群収束定理の収束レートに関する定理を援用することで、精密化を行うことができた。 本結果については論文の形へ整理し、国外の専門誌へ学術誌へ掲載された。
本研究課題の研究期間は2年間であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって2年間延長することとなり、大幅な研究計画の変更を余儀なくされた。しかし、その間に各課題に対してじっくりと検討を重ねることができた。特に、ベキ零被覆グラフ上の非対称ランダムウォークの極限定理に関連して、(1) 非対称ランダムウォークが大数の法則と中心極限定理の間の任意のスケールにおける確率減衰を表す中偏差原理を満たすことを証明し、その応用として重複対数の法則が成り立つことを示した、(2) 以前に証明した非対称ランダムウォークの中心極限定理の精密化として、誤差の完全な漸近展開(Edgeworth展開)を得ることができた、などの結果を論文の形に整理し、出版することができた。これまでの研究により、ベキ零被覆グラフという非可換な離散空間上のランダムウォークに関して、基本的な極限定理はほぼすべて得られたということになる。さらにランダムウォークの極限定理に関連して、本年度行ったような研究計画当初は予定にない新たな方向性も見出すことができた。
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